「規範の転換」を意図した防衛装備移転三原則(承前)
一方、旧三原則等が有していた武器輸出抑制の規範性を相対化するために、防衛装備移転に積極的平和主義を見出す手法を用いたことで、三原則は新たな規範性を帯びることとなった。それは、武器輸出の安全保障上の意義の強調である。新たな三原則では、①平和貢献・国際協力、②同盟国等との国際共同開発・生産、③同盟国等との安全保障協力の強化、④自衛隊の活動等を目的とし、安全保障上の観点から移転を認め得る場合を整理した。一方で、商業輸出に使える上記③の場合は、三原則の下の運用指針において、救難、輸送、警戒、監視及び掃海といういわゆる5類型に絞り込まれ、この下で移転し得る武器に殺傷性のあるものが含まれるか否かが曖昧なまま残された。
武器輸出の是非を判断する際、そこに積極的な安全保障協力の意義を見出すべきことは当然であり、日本だけではなく武器輸出を行っている主要国の対外政策の方針とも一致している。日本が米国から先進的な武器を購入する際に用いている対外有償援助(FMS)も、米国国内法に基づく枠組みであり、同盟国等の能力強化を目的としたものだ。
しかし、安全保障協力の意義が従来の輸出抑制規範を上書きする形で用いられたことで、三原則運用指針では、輸出に伴う防衛産業基盤の強化という意義が取り残されるという副産物を生んだ[20]。その中では、例えば、5類型に当てはまるであろう救難飛行艇、輸送機、哨戒機、掃海艇などが、他国の競合製品との関係で国際競争力を有しているのか、といった国際市場に関する分析・考慮は働かなかった。
本音の上では、政府は輸出を防衛産業強化の活路として捉え、実際そのことが2014年の「防衛生産・技術基盤戦略」で間接的に言及されていた。しかし、国際的なニーズ・引合いを、輸出を認め得る類型に具体的に落とし込む作業が組み込まれていたわけではなかった。防衛産業の強化にとって輸出が重要な位置を占め、防衛産業の強化が防衛力の強化につながるという考え方が議論され始めたのは、実は最近のことである。しかも、戦略三文書においても、三原則運用指針見直しに係る与党実務者協議においても、そのことが正面から意義に格上げされ論じられているわけではないのである。……