今年6月、カナダと米国でシーク教組織の指導者を狙った事件が相次いだ。殺人の指令はインド本国から、暗躍するスパイに発出されていた。北米で殺人計画の対象とされたターゲットは計5人に上り、1人がカナダで殺された。米国では1件が未遂事件となり、あと3件の計画は実行を断念したようだ。
インドの情報機関が米国とカナダの主権を侵害して、秘密工作を実行に移すといった事態は極めて異例だ。西側が進める「インド太平洋戦略」に衝撃を与えたと言っても過言ではない。
カナダのジャスティン・トルドー政権とインドのナレンドラ・モディ政権は互いに、相手国駐在の情報機関員の追放を発表、両国間の対立は当面、収拾が難しいようだ。他方、米国で起きた殺人未遂事件をめぐって、ジョー・バイデン米大統領はウィリアム・バーンズ中央情報局(CIA)長官らをインドに派遣、「静かな外交」で妥協策を探っているとみられる。
脅威を増す中国に対抗して、日米などは「クアッド」などでインドとの関係をこれまで順調に強化してきた。しかし、想定外の事件発生でどう対応すべきか。事件の深層に迫ってみたい。……