今夏の防衛省人事に注目が集まっている。高市早苗政権が年内実現を目指す「安全保障3文書」の改定を前に、据え置きと目された大和太郎事務次官の交代説がまことしやかにささやかれ始めた。高市官邸と小泉進次郎防衛相の微妙な関係、さらに後任人事も複雑に絡み合う。自衛隊トップの統合幕僚長人事も今後の道筋を占う正念場だ。欧州、中東情勢が緊迫する中、国防中枢の幹部人事が日本の外交安保政策に与える影響は大きい。
大和氏は1965年9月生まれの60歳。慶大法学部を卒業後、平成2(1990)年に旧防衛庁に入庁し、防衛政策課、調査課、運用企画課など防衛政策の本筋を歩んだ。語学が堪能で、執務室のテレビでは常に英語の海外ニュースを流している姿が見られたほど。米国人脈や政治家との付き合いも広く、防衛政策局長を経て昨年8月に鳴り物入りで事務次官に就任した。
“剛腕”で知られた前任の増田和夫事務次官(昭和63[1988]年入庁)とは真逆の知的な実務家タイプではあるものの、その増田氏の退任式での挨拶で感極まって嗚咽を漏らすなど、意外に人情家の側面も併せ持つ。
だが、周囲の期待感が大き過ぎたのか、最近、防衛界隈でこんな声も聞こえる。
「大和さんは防衛政策局長だった時の方が生き生きとしていた」
防衛政策局長は国会答弁に立つ場面が多く、高身長で顔立ちの整った大和氏が野党の質問に毅然と答える姿が印象的だった。対照的に、省内人事や官邸との調整など水面下での厳しい判断を求められる事務次官は「人柄として向いていないのかもしれない」(政府関係者)との見方もある。
大和氏退任なら年次の「ねじれ」が継続
安保3文書は今後10年間の防衛政策を示す基幹文書。2022年の前回改定では、5年間の防衛費を43兆円へ大幅増額し、長射程ミサイルの導入を決めるなど歴史的転換点となった。今回は防衛費の拡充と財源、武器輸出や産業基盤整備といったテーマが控える。
大和氏を巡っては小泉進次郎防衛相との「近さ」も取り沙汰される。高市首相と小泉氏が争った昨年10月の自民党総裁選の直前、大和氏は周囲に「やはり進次郎氏か」と並々ならぬ関心を寄せていた。防衛記者界隈では大和氏は「小泉ファン」で知られる。