連載 > 社会

欲しがりません勝つまでは

2026年6月8日


<span>欲しがりません勝つまでは</span>

  物がない! 東京の果物屋では果物の代わりに焼き海苔やお茶っ葉を売っている。よく観ると奥の方に超高価なメロンが1、2個。それだけ。戦争のせいだ。日米開戦から約半年。月刊誌『中央公論』は昭和17年7月号で戦時の物不足を特集した。そこで東京市役所の配給第一課長、沖おき鹽しお正夫は嘆く。果物は東京に来てはいる。確かに少ないが。農村では労働力も肥料も欠乏。運搬する車両や燃料も不足。しかし店頭にはもう少し出てよいはずなのだが。少なくとも役所の統計上の数字ではそうなる。目詰まりしているのだ。業者が「お屋敷方面」、現代語に翻訳すれば「上級国民」に特別な価格で流していると市民は噂してもいる。

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する