根拠のないものにまで
その昔、医者は自分一人で患者の診療方針を決めた。患者の同意どころか、説明も不要だった。なぜなら相手は素人で、何も分からないから説明しても無駄で、患者の「希望」なんて聞いていたら安易で間違った方向に行くのだ。これをパターナリズムと称する。その後、患者と医者には上下関係はないのだから、きちんと説明のうえ同意をもらう、いわゆるインフォームド・コンセント(IC)が原則となった。
最近ではさらにシェアード・ディシジョン・メーキング(SDM)という概念が出てきた。患者と医者との「共同での意思決定」である。SDMでは患者と医者が十分に話し合う。医者は科学的なデータやエビデンスを説明し、患者は自らの価値観や希望を述べ、互いを十分に理解したうえで、最も納得できる最善の治療方針を決定する。これですべて解決かというと、むろんそんなわけはない。ICもSDMも日本語訳がいまだになく、いかにも胡散臭い。金科玉条とすると問題が出る。