6月3日の韓国統一地方選と国会議員補欠選挙の結果は、与野党双方ともに党内での波乱を予告するものとなった。進歩派の与党・共に民主党は勝利を収めたものの、手放しで喜べる結果ではなかった。次期代表を選ぶ8月の党大会へ向け、主導権争いが激化するのは必至だ。一方、保守派の最大野党・国民の力では、穏健保守路線を主張する非主流派が勢いを見せた。強硬右派路線の主流派から実権を奪おうとする動きが強まることになりそうだ。
期待値には遠く及ばなかった「12勝4敗」
勝敗のバロメーターとされる16の広域自治体首長選では、民主党が12勝4敗だった。数字の上では民主党の「圧勝」だが、期待値には遠く及ばなかった。民主党では当初、高い大統領支持率を背景に「15対1」という歴史的勝利も夢ではないと語られていたのだ。首都ソウルの市長選を落としたのも痛かった。
それだけではない。同時に実施された14選挙区での国会議員補選の結果がひどかった。選挙違反での失職や地方選出馬のための辞職で空いた選挙区なのだが、このうち13選挙区はもともと民主党が持っていた議席だ。それなのに補選で勝ったのは、民主党9、国民の力4、保守系無所属1だった。2024年の前回総選挙は民主党の地滑り的勝利だったので、それを維持するのは難しいという事情を考慮しても芳しい結果とは言い難い。
注目された選挙に絞って見ると、与党にとって厳しい結果だったことがより鮮明になる。今回、与野党の激しい競り合いとして注目されたのは、ソウル、釜山(プサン)、大邱(テグ)という3つの市長選に加え、釜山と京畿道・平沢(ピョンテク)で実施された国会議員補選だ。このうち民主党が取れたのは釜山市長選だけだった。本稿ではこうした選挙の結果を見た上で、今後の政局の行方について考えてみたい。
「大統領の高支持率」を過信したソウル市長選
象徴的な意味を持つ首都決戦では、通算5期目を目指した国民の力現職の呉世勲(オ・セフン)市長に民主党の鄭愿伍(チョン・ウォノ)前城東区長が挑戦した。序盤の世論調査では鄭氏が優勢だったものの、終盤で呉氏が巻き返して競り勝った。
明暗を分けたのは両者の選挙戦略だ。呉氏は、強い危機感を抱いて選挙に臨んだ。2024年12月の非常戒厳以降のゴタゴタで党の支持率は落ち込んだまま。しかも張東赫(チャン・ドンヒョク)代表ら党指導部は、いまだに尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領を切り捨てられない強硬右派で占められている。呉氏自身は当初から非常戒厳を批判してきた穏健保守派ではあるものの、党の現状を考えれば5選には黄信号が灯っていた。そこで呉氏は、選挙戦に入る前から党指導部と対立する姿をアピールし、選挙戦でも党指導部の応援は一切受けない姿勢を貫いた。このことで、党に対する中道層の拒否反応をかわすことに成功したようだ。
一方で鄭氏は李在明(イ・ジェミョン)大統領の高支持率を過信して、挑戦者なのに「守りの選挙」を戦った。もともとは無名に近かったが、昨年12月に李大統領から行政手腕を称賛されたことで一気に知名度を上げた人物だ。これで支持率が急上昇し、党内予備選は難なく制することとなった。本選でも「李在明がピックアップした候補」というイメージでの逃げ切りを狙い、経験の少なさを露呈しかねない候補者討論などを避けたとみられている。これが逆に、呉氏側から「逃げている」と攻撃された。
さらに鄭氏は、買春がらみという印象を持たれるスキャンダルにも適切に対処できなかった。約30年前、飲食店の女性従業員に外泊を持ちかけて断られ、トラブルになったというものだ。当時の社会状況を考えれば「買春目的」とみられても仕方ないものだった。これで、ジェンダーに関する意識を高めている20代、30代女性の票を減らしたとされる。
李在明政権の不動産政策への不安心理も、鄭氏にとってはマイナスに働いたとみられている。李政権は近く、住宅価格の高騰を抑えるための税制改革を実施しようとしている。日本の固定資産税に相当する税金の額が市場価格の上昇に応じて引き上げられるなど、住宅価格が高い地域の住民にとって痛みが大きい方向性になりそうだ。となると、そうした地域では民主党側に不利な材料になる。実際、鄭氏の得票率が呉氏に及ばなかったのは、ソウル市内でも住宅価格が高く、近年の価格上昇率も高い地域ばかりだった。