カルチャー

連載小説:裂けた明日 第2回

2021年5月8日

内戦により、分断された日本。相次ぐ震災と原発事故、そして例の病気の蔓延で、国民の生活は壊滅的な影響を受けていた。家族を亡くし一人暮らす男の元へ、逃亡者が現れる――。<作家の眼が、現実を鋭く照射する。近未来の分断日本を描く、スリリングなSF長篇>

テロ組織の女が訪ねてきたのではないか――? 身に覚えのない問いを受け、信也はそれを否定するが……。

 [承前]

 玄関先で彼らを見送っていると、入れ違いに坂道に入ってきた軽自動車があった。この地区の町内会の役員とその夫人が来たのだとわかった。町内の農家の夫婦だ。信也の書棚から有害図書が奪われたときも、ふたりはこの家にきて熱心に本を検分した。

 玄関前に車を停めて、ふたりが下りてきた。亭主のほうは、少し怪訝そうな顔でSUVが去っていく方向に目を向けている。……

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