社会

「寝そべり」主義の内実――プレッシャーの中でも突き進む中国の若者たち

2021年7月26日


<span>「寝そべり」主義の内実――プレッシャーの中でも突き進む中国の若者たち</span>

中国の若者の新たなライフスタイルとされる「躺平」(寝そべり)現象は、多くの場合その実態を誤って解釈されている。5歳から北京に住み、清華大学大学院を卒業後、中国の若者のトレンドなどについての寄稿も多い筆者に、現地の若者へのインタビューを交えてレポートしてもらった。

 4月17日、中国の大手サーチエンジンであるバイドゥの電子掲示板サイト「貼吧」にて、「躺平即是正義」(寝そべりは正義だ)というスレッドが立ち上がった。スレッドを立ち上げたユーザーは、自身の経験をもとに「2年以上仕事をせずに、遊びほうけている。(寝そべっていることは)別に間違いではない。プレッシャーは全て他人との比較や、先人から受け継ぐ伝統的観念によって生じるもの――人間はそうあってはならない」と語った。

 それから、「躺平主義」(寝そべり主義)という言葉は瞬く間に若者を中心に拡散され、中国の大手SNS「ウェイボー」でも寝そべりに関する話題のスレッドはPV(ページビュー)数が2,500万を超えている。日本でも報道が相次いでおり、寝そべりが中国で社会現象化しているという記事も見受けられる。しかし、その実態は報道と大きく乖離を生む状況に陥っている。

まず理解が必要なのは「内巻」という概念

 寝そべりの実態を解説する前に、まずは「内巻」を説明したい。「内巻」の由来は社会学用語である「Involution」で、「限られた資源のもと、外部の資源に頼ることができず、内的に複雑化し発展を遂げる」という意味合いを持つ。転じて、現在、中国では激化している社会競争の中で、たゆまない自助努力でひたすら自分を磨き続けることが礼賛されており、その度合いが年々苛烈になっている様子を表す言葉として使われている。

 「内巻」は2020年の十大流行語にも選出された。中でも、昨年の9月、清華大学の学生が自転車を漕ぎながら、片手にPCを持ち、コーディングをしている様子がネット上にアップロードされたが、この写真は「内巻」を象徴する最たる一枚だ。中国の名門大学でも熾烈な争いが繰り広げられていることは多くの若者の議論を引き起こした。後に、この学生は「実験用のシミュレーションを回している最中で、バグが起きないように、PCを開いて確認しながら自転車を漕いでいた」と釈明したものの、「内巻」は大学を飛び越え、様々な分野や業界でも使われた。数年前に流行語となった大手IT企業の過酷な勤務体制を表す「996」(午前9時から午後9時まで、週6日の勤務)や「007」(午前0時から翌日の午前0時まで、週7日の勤務)もまさにこの「内巻」を具現化したものであろう。……

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