「シャネル」など海外高級ブランドに目がない方なら、ここ10年ほどの間に国内での販売価格が大幅に引き上げられていることをご存じだろう。とくに最近の値上げは大幅で、「今の値段ではもう手が出ない」といった溜息まじりの声も聞かれる。
また、仕事から帰ってワイングラスを傾けるのを楽しみにしている方なら、ここ数年でつまみの輸入フランスチーズの価格がうなぎ上りであることに気付いているはずだ。EU(欧州連合)との間で経済連携協定が結ばれ、関税は下がっているはずなのだが、販売価格は逆に上昇している。
こうした輸入品の価格上昇は、為替のなせるワザだ。円安になって円の購買力が落ちているのである。いやいや為替はここ10年近く、1ドル=100円から120円の間で安定的に推移し、それほどの「円安」にはなっていないではないか。そう思われる読者もいるに違いない。確かに表面的には為替がどんどん円安に進んでいるようには見えない。だが、この間、世界は経済成長と共に物価が上昇したのに対して、日本はデフレで物価は上がっていない。つまり、同じ1ドル=110円でも、1ドルの価値が10年前とはまるっきり違うのだ。
世界でモノが買えなくなった
この10年、米国の物価は上昇を続けたが、それと同時に名目賃金も上昇してきた。物価水準を統計で比較するのは難しいが、米国ニューヨークの場合、不動産の賃借料は新型コロナ前まで毎年のように上昇を続けた。ニューヨーク・マンハッタンで治安がそこそこ悪くない場所にマンションを借りれば、月額5000ドル(約55万円)は普通である。逆に言えば、マンハッタンで暮らすビジネスマンの収入は円換算すれば「高給取り」だが、米国基準では決して裕福な層というわけではない。……