政治

NATO拡大がウクライナ危機を招いたのか?

2022年2月25日

仮に侵攻が「限定的」なものに止まっても、ウクライナはその全体が死に晒されていると見るべきだ。プーチンは「民主主義の失敗」を示すまで止まらない。NATO拡大がロシアを戦略的競争相手に変えたというような歴史修正主義的な捉え方は、プーチンの「冷戦終結の結果をすべて覆す」という明白な目的を覆い隠す危険がある。

 ついに起きてしまった。何週間もかけて徐々に戦力を増強してきたロシア軍は、2月21日、ウラジーミル・プーチン大統領がドネツク州とルガンスク州の親ロシア派支配地域の独立を一方的に承認した後、ウクライナに侵攻した。ロシア政府は「大量虐殺」や「ファシスト」、「平和維持軍」などの言葉に、まるでジョージ・オーウェルの『1984』のように本来とは逆の意味を持たせている。19万人のロシア軍に囲まれたウクライナが、ドンバスへの大規模な攻撃とロシアへの侵攻を計画しているというプーチンの口実は、あまりにも見え透いており、馬鹿げている。

 自由世界がいまこそ、最大限の制裁を加えなければならないことは、はっきりしている。「限定的な」侵攻だからそれに見合った対応を、と言っている時ではない。制裁は、ロシアのエリート集団すべてに大規模に適用されなければならない。彼らには将来、北京で高級住宅を購入できても、ロンドンでは購入させない。ドイツは天然ガス・パイプライン「ノルドストリーム2」稼働の認証手続きを停止すると発表した。意義がある。私が期待していた以上だ。この15年間、モスクワがサラミを薄く少しずつ切るように主張を通してくるのを見てきたが、これから先、どこかでそれが止まると考えるのは甘すぎる。

ロシアは「勢力圏」が欲しいのではない

 プーチンが行った演説はその意図を露わにしている。昨年夏に発表した論文と同様に、ウクライナは独立した国ではなく、大ロシアの一部であるという立場を再び主張している。 今回は、想像力たくましくロシア革命の英雄ウラジーミル・レーニンのことも非難している。そこには、ウクライナに実際に住んでいる人々の願いへの配慮は一切見えない。

 プーチンは、現在のようなウクライナがロシアの将来にとって決定的脅威となっているという。プーチンの描くビジョンにおいては、そのとおりだろう。だが現実のウクライナは、ロシアを軍事的に脅かすものではなく、また、ロシア国民を脅かすものでもない。ただプーチン自身にとっての脅威なのである。ウクライナは欧米と結びつく自由民主主義を目指している。それはスラヴ民族にはあってはならないとプーチンは考えているからだ。ウクライナが民主化できるのであれば、ロシアも民主化できないはずはなく、それはプーチンとプーチン主義の終焉を意味する。ロシアは「勢力圏」や安全保障上の緩衝地帯を必要としているのではない。近隣のどこであろうと民主主義が失敗することを示す必要があるのだ。つまり、旧ソ連の領土にロシアの勢力圏を認めるということは、ウクライナの場合は4000万人のウクライナ人を独裁と抑圧に委ねることを意味する。……

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