5.ヨーロッパの役割の拡大
■ヨーロッパの「地政学的な覚醒」を左右するドイツ
ウクライナ戦争によって、ヨーロッパの安全保障秩序も巨大な影響を受けることになる。具体的にどのような変化が見られるようになるのだろうか。
ドイツのシンクタンク、独外交政策協会(DGAP)の複数の研究員によりまとめられた論考では、今回のウクライナ戦争が欧州安全保障秩序の「転換点」になり、巨大な地殻変動をもたらすと論じる[DGAP Policy Brief, “Zeitenwende für Europas Sicherheitsordnung(欧州の安全保障秩序の転換点)”, DGAP, April 7, 2022]。その場合にこれからヨーロッパがロシアに対して、「対立」、「共存」、「協力」という3つの選択肢が考えられると論じる。
他方で、今後のヨーロッパの安全保障政策を考える上で、「強いヨーロッパ」を前提に考えていかなければならなくなるだろう。またそれを実現するためには、アメリカ、カナダ、日本、オーストラリアなど、民主主義や自由、法の支配というような価値を共有するパートナーが不可欠となる。欧州の安全保障秩序や、ドイツの安全保障政策が本当に「転換」していくのかどうかは、今後数年間でどの程度、ヨーロッパが自己決定権を確立できるかによる、と論じる。
ジャーマン・マーシャル基金のフェローであるアレクサンドラ・デ・ホープスケファーとゲシーヌ・ウェバーの2人は、「平和プロジェクト」としてのEUの将来像にとって、今回のウクライナ戦争が「地政学的な覚醒」の契機になるとして、以下のように論じている[Alexandra de Hoop Scheffer and Gesine Weber, “Russia’s War on Ukraine: the EU’s Geopolitical Awakening(ロシアの対ウクライナ戦争―EUの地政学的覚醒)”, The German Marshall Fund of the United States, March 8, 2022]。……