6.ウクライナ戦争と米中関係
■注意深く見つめる中国
ロシアによるウクライナ侵攻の開始によって、中国が台湾へと侵攻するのではないかという懸念が広がっている。アトランティック・カウンシルの中国専門家であるマイケル・シューマンは、「次は台湾か?」と題する論考のなかで、中国が台湾を武力で統一する可能性を示唆している[Michael Schuman, “Is Taiwan Next? (次は台湾か?)”, The Atlantic, February 24, 2022]。そこでは、民主主義諸国の影響力が後退する一方、権威主義諸国の主張が強まり、そのような有利な情勢の中で中国による台湾侵攻の可能性が高まっているとみるべきだと論じられる。
とはいえ、世界的に著名な中国専門家の多くは、そのような中国による台湾の武力統一の可能性はそれほど大きくはないと見積もっている。たとえば、ジャーマン・マーシャル基金のボニー・グレイザーと東吳大学助教の陳方隅は、インタビュー記事の中で、「台湾の状況は全く違うであろう。中国が台湾に侵攻した場合は、アメリカは軍事介入を行う可能性が高い」と述べ、短期的には台湾海峡で危機が勃発する可能性は高くないことを示唆している[Bonnie S. Glaser、陳方隅(Chen Fang-Yu)「專訪: 今日烏克蘭,明日台灣?(インタビューー今日のウクライナは明日の台湾?)」、『德國之聲』、2022年2月25日]。
また、昨年台湾問題について論じた論考が注目されたオリアナ・スカイラー・マストロも、ウクライナ侵攻は中国による台湾侵攻の可能性を大きく高めることはないと論じている[Oriana Skylar Mastro. “Invasions Are Not Contagious: Russia’s War in Ukraine Doesn’t Presage a Chinese Assault on Taiwan(侵略は伝染しない―ロシアのウクライナ戦争は、中国の台湾攻撃の前兆ではない)”, Foreign Affairs, March 3, 2022]。
同時に、中国はウクライナ戦争の推移を注意深く見つめており、戦争の帰趨が中国の将来の行動を大きく左右するのも事実であろう。……