中山俊宏・慶應義塾大学総合政策学部教授(2022年5月1日死去)と私との最後の仕事は、国際問題研究所の刊行する『国際問題』への寄稿であった。同誌の編集委員を務めておられた中山教授は、アフガニスタンからのアメリカ軍の撤退と、それに伴う共和国政府の崩壊を目のあたりにして、「国家建設」をテーマにした特集号を企画された。この特集号に私が寄稿することになったのであった。中山教授と、事前に問題意識を共有する会話をしたことが懐かしい。
アメリカ外交を専門にする中山教授が、アメリカのアフガニスタンへの関与に大きな関心を持っていたことは自然だろう。中山教授の関心は、アメリカの軍事介入を裏付ける思想的問題にも注がれていた。その部分で、私の専門領域とも大きく関わっていた。たとえばむしろ私などよりも強く、アメリカのミャンマーにおけるクーデターへの対応について、「保護する責任」論の観点からも見守ろうとしていたのが、中山教授であった。
ロシアのウクライナに対する侵略戦争に臨むアメリカの振る舞いにも、中山教授は大きな関心を持っていた。5月18日に開催された『国際問題』特集号の執筆者陣によるウェビナーで、そのことについて少し語ってみた。本稿でも、アフガニスタンからウクライナをめぐる国際情勢を参照しながら、近年のアメリカの介入史を捉え直し、私なりの中山教授へのささやかな追悼文としてみたい。
「オーナーシップ」なき国家建設の挫折
昨年8月のカブール陥落は、われわれにとって大きな衝撃だった。9・11テロ事件を受けて、アメリカが圧倒的な軍事介入で当時のタリバン実効支配政権を倒した後、前例のない大規模な「国家建設」が20年にわたってアフガニスタンで行われた。中山教授や私の世代にとっては、研究者人生のほとんどの期間で、アメリカが主導する「国家建設」が、泥沼の戦争とともに、アフガニスタンで行われていたわけである。……