安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、参院選投開票では自民党が改選議席(125)の過半数となる63議席を獲得して大勝した。野党第一党の立憲民主党は退潮。この夏、日本政治は大きく揺れ動いた。岸田文雄首相は当面、国政選挙がない状況下で政局運営の主導権を握るかのようにも見える。だが、現実は経済や外交などで課題は山積している。自民党内は路線や政策をめぐって対立を深めていくだろう。それは政界全体の再編につながる可能性を秘めている。
憲政史上最長「7年8カ月」の功績と挫折
安倍氏は7月8日昼、奈良市内で選挙遊説中に元自衛官の山上徹也容疑者に銃撃され、緊急搬送されたが、同日夕に死去した。安倍氏の突然の死去は、戦後日本政治に最大級の衝撃を与えている。
安倍氏は2012年に首相に返り咲き、憲政史上最長となる7年8カ月の長期政権を維持した。金融緩和を柱とするアベノミクスで景気を回復させ、15年には集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制を成立させた。自民党が野党時代の12年の衆院選を含め、衆参両院の国政選挙は計6回、勝利して自民党の基盤を強化した。
一方で、アベノミクスは金融緩和に続き、財政出動も繰り返したものの、肝心の成長戦略や構造改革は自民党を支える利害団体の抵抗もあって進まず、貧富の格差も広がった。安保法制は、海外での武力行使を禁じた憲法9条に違反するという批判が根強い。外交面では、ドナルド・トランプ米大統領と親密な関係を築き、中国との関係改善も進めた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とは首脳会談を重ね、北方領土問題の打開を模索。それまでの4島一括返還から2島先行返還に譲歩したが、プーチン大統領は歩み寄らず、成果は出なかった。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、北方領土交渉は頓挫している。……