- スーダン「最後のアラブの春」の挫折と南スーダン「独裁下の小康」が投げかける問い
西アフリカは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の観点からは、縁遠い地域だろう。海洋国家である日本は、海洋国家らしい国家政策を持っていてよい。地域を超えて一続きにつながる大洋沿岸部の自由と開放を戦略的目標とみなすのは、当然の態度である。裏を返せば、アフリカ東部のインド洋沿岸部と、西アフリカの大西洋沿岸部を、異なる大洋に面した地域として、異なる視点で見るのは仕方がないことだ。
ただし、実際には、本当にアフリカ大陸の東部沿岸部だけを切り取って見ていくことはできない。現代世界で最も武力紛争が頻発している地域の一つである「サヘル」は、アフリカ東部から西部にかけて大陸を貫くように帯状につながっている。東と西のつながりはもちろん、他の甚大紛争地域である中東とも、歴史的・文化的なつながりを深く持っている。たとえばアル・カイダや「イスラム国」に忠誠を誓うイスラム過激派勢力は、サヘルの帯をたどって、中東からアフリカ東部、そして西部へと流れていった。サヘル情勢を把握しておくことは、東部を含むアフリカ大陸全体の動向を把握するために必須である。
本稿では、その観点から、『「アフリカ不在のFOIP」脱却論』シリーズの最終回として、サヘルの西アフリカ情勢について、情況分析を試みたい。
マリにおける国際平和ミッション消滅の衝撃
マリに展開していた要員1万人以上の巨大国連PKO・MINUSMA(国連マリ多元統合安定化ミッション)が、2023年12月末日で消滅した。マリのクーデター軍事政権に、撤退を要求され、やむなく活動を終了させざるをえなくなった。失意の中の活動終了である。……