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Vol. 5

人間関係の効率化がもたらす “他責思考”という病理、そして「共有」「社交」へ

2026年5月20日


<span>人間関係の効率化がもたらす “他責思考”という病理、そして「共有」「社交」へ</span>
総合地球環境学研究所の山極壽一所長

石器、文字、農耕――。ヒトが発明してきた道具や技術は数知れないが、現代に至ってついに人工知能を生み出した。しかし、農耕の始まりが格差や戦争をもたらしたように、発明には常に負の側面が付きまとう。霊長類学者で総合地球環境学研究所所長の山極壽一氏は、AIがヒトの社会にもたらしたものこそ「関係の効率化」だという。効率化の過程で変容するヒト社会はどこへ向かうのか。

AIがもたらした「人間関係の効率化」

 AI技術の発達に伴い、いま急激な「人間関係の効率化」が起こっているように感じます。従来、ものづくりの効率化は工業化社会で長らく目指されてきました。それでも、人との関わりだけは紆余曲折を経ながら時間をかけて作られていくのが常識だった。それが今では、人間関係までも効率化していこうという風潮を強めています。

 その最たる例が、マッチングアプリの登場です。こうしたアプリでは、年齢・収入・趣味などといったその人に付随するデータをもとに、それぞれの好みに合わせた適当な相手をレコメンドしてマッチングへとつなげていきます。

 当然、不要な情報を排除して気になる情報だけを見れば、一人当たりに割くコストは減り、より多くの人と“出会う”ことができます。最良の相手を求めるのであれば、母数を増やしてその中から選別するこの方法は確かに効率的です。しかし、効率化を追い求めるあまり、見落としているものがないでしょうか。

 例えば、サルは上下関係に非常に厳しい動物で、食物の量が限られている場合、弱いサルは強いサルに場所を譲り、食物から手を引きます。もし弱いサルが序列に反した行動を取れば、群れのサルたちはこれを咎めるのです。“序列がすべて”の環境においてサルたちは相手の考えていることを一切読む必要がなく、その関係性は非常に効率的です。“自分より強いか弱いか”がお互いを判断する唯一の基準。サルたちは究極の「関係の効率化」を図っていると言えます。

 先のマッチングアプリの隆盛を見ていると、AIの登場は人間社会の“サル化”に拍車をかけているように思えるのです。

 確かに“サル化”すれば、相手の置かれた状況を考慮することも、お互いの関係を過去に遡って心理を探ることも必要ありません。しかし、「関係の効率化」を是とした時、お互いを判断する基準はどうなるのでしょうか。それは、サルと同じように“自分より強いか弱いか” “相手が自分にとって利益になるか”といった極めて安直なものになってしまうのではないでしょうか。

効率化によって“他責思考”な社会に

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