井原忠政『三河雑兵心得1 足軽仁義』(双葉社、2020)
2023年の大河ドラマは松本潤主演の「どうする家康」。最近刊行されている歴史解説書や小説は、徳川家康ネタのオンパレードとなっている。
そのなかでここ数年コアな人気を集め続けているのが、井原忠政氏による「三河雑兵心得シリーズ」だ。同シリーズの特徴は、主人公・植田茂兵衛という一雑兵の視点から家康一代記を書き起こしているところにある(近刊での主人公はすでに「雑兵」ではないが)。各時期の松平・徳川家がおかれた状況や家康の葛藤を、家康以外の一個人の目線からとらえる本作は、大河ドラマに向けての予習に好適な作品といえるだろう。
そして、同シリーズは典型的な「サラリーマン小説」の形式を備えていることも、ビジネスパーソンにとっての「読みやすさ」の源泉になっている。同僚や部下との葛藤、家族についての悩み、恋愛……そして歴史とエンタメ要素がてんこ盛りの同作。すでに10巻と姉妹編一冊が刊行されているが、一息に読み進めることができる。
今村翔吾『蹴れ、彦五郎』(祥伝社、2022)
昨年下半期の直木賞受賞作となった『塞王の盾』は、戦国期の城郭防衛戦が題材だったこともあり、氏を歴史小説家と認識している方も多いだろう。また、デビュー作である「羽州ぼろ鳶組」シリーズは熱烈なファンを抱えていることで有名だ。デビューからわずか5年半で30冊以上の作品をものした源流はどこにあるのか。初期短編集である本書であらためて認識してみるのもよいだろう。……