僕は日本に急増している外国人の取材を生業のひとつとしているので、彼らの生活圏にはよくお邪魔する。現地の味そのままの食堂とかスパイスの香り漂う食材店あたりで話を聞かせてもらうことが多いが、宗教施設もときどき訪れる。タイ人やミャンマー人の通う仏教のお寺や、フィリピン人が集まる教会、イスラム教徒が大切にしているモスクなどだ。
そういう場所でよく、貼り紙を目にする。「新しくどこそこにモスク(とかお寺)をつくるので寄付募る! 以下は概要&振込先」なんて内容だ。そう、日本にある外国の宗教施設は、寄付によって建立されているところが多い。土地・建物を合わせて数千万円という買い物になるわけだが、それを仲間うちの寄付で賄ってしまうからスゴい。彼らがどうやってスタートアップから開基まで持っていくのか気になっていたのだが、そこを丹念に取材したのが、岡内大三『香川にモスクができるまで 在日ムスリム奮闘記』(晶文社、2023年)だ。
香川県で溶接工として働くインドネシア人フィカルさんを中心に、おもに技能実習生の若者たちが資金を集め、物件を探し、ときに日本社会の冷たさに直面し、コロナ禍に見舞われ、それでもめげずにモスク建設に挑む。なによりも心に残るのはフィカルさんの人柄だ。長渕剛を愛し、讃岐弁を操るほどこの国に溶け込んだ彼のポジティブさと実直さに引っ張られ、インドネシア人たちが奮闘する。
彼らが欲しているのは、祈りの場であり、かつ仲間が集まれる“ホーム”なのだろうと思う。気の置けない同郷同士、母国語でなんやかやと近況を話せる場所、そこに行けば誰かがいて、ちょっとした悩みを相談できるような場所……翻って、僕たち日本人はそういう場所を持っているのだろうかとも考えさせられる。……
