テクノロジー

実用化は「時間の問題」――日本の量子コンピュータ戦略を加速させる「人事」という論点

2026年6月5日


<span>実用化は「時間の問題」――日本の量子コンピュータ戦略を加速させる「人事」という論点</span>
我が国の量子戦略の課題とは(写真は産総研も入る経産省別館)

「量子技術は単なる先端科学技術のみならず各国の国富の多寡、安全保障・経済安全保障を左右する重要産業になりつつある」(量子技術イノベーション会議・内閣府2025年5月30日)。アメリカや中国、欧州各国が開発に邁進している量子コンピュータには、日本政府も重点的な投資を明言している。
 量子コンピュータが実用化すれば、新たな物質が発見される可能性があるなど、「産業革命」を起こすほどのポテンシャルがあるといわれる。日本は量子コンピュータ、並びに量子産業について、どのような政策を展開していくべきなのか。
 そこでこのたび、アメリカの量子コンピュータ開発企業「QuEra Computing」(以下、QuEra)プレジデント兼取締役の北川拓也氏にインタビューを実施。QuEraは世界の中性原子型量子コンピュータのトップランナーとして知られており、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)のプログラムにも採択されている。アメリカの最前線で活躍する「日本人」の同氏が見る、量子技術の現在地と、日本の量子産業政策における課題とは。(聞き手=湯浅大輝)

産業革命レベルの発明「量子コンピュータ」

 量子コンピュータの実用化はあらゆる産業を一変させます。量子コンピュータの本質は「計算革命」にあり、従来の古典コンピュータでは現実的な時間で解くことが困難だった、物質科学・化学・生物学において、量子力学が関わる分子レベルの現象を、これまでとは桁違いのスピードで解明できるようになります。

 このことで触媒などの新たな化学物質の発見、新素材を活用した高性能な電気自動車用バッテリーの開発、さらには探索コスト削減による新薬の開発など、科学の発明が加速することで、19世紀の「産業革命」に類する文明の飛躍的発展を遂げると予想されています。

 AIなどの技術力と資本力でリードをとっているアメリカは、研究開発に投下する資金においても、人材の厚みにおいても、他国と圧倒的な差をつけています。

 一方、日本の先見性も評価すべきです。産業技術総合研究所(以下、産総研)は、2023年にG-QuAT(量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)を立ち上げるなど、「量子コンピュータとAIは双方の進化を加速する」という極めて重要な観点に早くから気づいており、具体的なプログラムを推進してきました。AIが量子コンピュータの誤り訂正やカリブレーション(装置のずれの調整)、アーキテクチャのデザインに欠かせない技術になっている一方で、量子コンピュータはAI、特に「AI for science」(科学研究に活用するAI)の訓練に必要なデータを生成する、という相互補完関係にあるのです。産総研は弊社プロダクトも含む量子コンピュータを導入しており、量子・AI融合の研究を進めています。

 また日本は量子コンピュータの実機において、材料や精密機械などの部品メーカーにも強みがあります。そうした中で、日本の量子産業はどのような方向に進みうるのか。いくつか論点を提示したいと思います。

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