日本人は虫の声を愛でる奥ゆかしい文化を持つ――。そんな「日本人特殊論」には少々うんざりします。この誇張は『日本人の脳』(角田忠信著)という科学的根拠の薄い本に由来するのかもしれません。実際には、古代ギリシャをはじめ、他国でも古くから虫の音を鑑賞する習慣は広く存在します。
カナダ・マギル大学のジェームズ博士らの研究を紹介しましょう。国や地域のみならず、なんと、ヒトとその他の動物の間でも美的感覚が共通しているという、上位互換の発見で、論文は3月の『サイエンス』誌に掲載されました。
博士らは世界中から募った4196人の参加者に、録音された様々な生き物の鳴き声を評価してもらいました。たとえば、同じ種類のコオロギでも、鳴き声が上手な個体と下手な個体がいます。どちらの声のほうがメスに好まれるかは、過去の多くの研究によりすでに明らかになっています。そこで、コオロギのメスに好まれる声が、ヒトにも好まれるかどうかを比較したというわけです。