英国の首相キア・スターマー(63)が辞任を表明し、後任には同じ労働党からグレーター・マンチェスター前市長のアンディ・バーナム(56)が就任する見通しである。スターマー率いる労働党が総選挙で大勝してから約2年。支持率が低迷していたとはいえ、決定的な失政があったとも言いがたく、この首相交代を不可解だと受け止める人は多いだろう。
スターマーに何が欠けていたのか、人々はバーナムに何を期待するのか、過去の政権や他国のケースと比較しつつ探った。
劇場型政治からの反動
スターマーが辞意を示したのは6月22日だった。官邸前で記者会見を開き、労働党党首を退任すると表明した。労働党は7月半ばから新党首の選考に入り、近くバーナムを後任として決定する見通しである。
スターマーの辞任は、最近しきりに取り沙汰されていた。5月7日にあった地方選で、労働党は右翼ポピュリズムの「リフォームUK」や新興左派の「緑の党」に押されて大敗し、「スターマーでは選挙に勝てない」との意識が党内に広まった。重要閣僚の辞任も相次いだ。
ただ、ふらふらになりながらもスターマーが持ちこたえてきたのは、これといった後任候補が見当たらなかったからである。英国の首相は下院議員から任命されるのが慣例であり、党内の期待を集めるバーナムは自治体の長であるため、その資格がない。しかし、バーナムのために自ら辞任して議席を提供する現職下院議員が現れた。英中部メイカーフィールド選挙区の与党議員ジョシュ・サイモンズ(32)で、これによって6月18日に実施された下院補選で、バーナムはリフォームUKの候補を大差で破って当選を果たした。彼の国政復帰によって、スターマーはいよいよ追い詰められた。
スターマーのこのような姿を、2年前に予想した人は少なかっただろう。下院の圧倒的多数を制した党勢を背景に、長期政権を率いるだろうと、見込まれていたからである。