2026年1月24日、中国国防部は、中央軍事委員会(中央軍委)副主席・張又俠と、同委員で連合参謀部参謀長の劉振立を、「重大な規律違反および違法行為」の容疑で立件・調査していると公表した。これにより、2022年の第20回党大会で選出された中央軍事委メンバー7名(習近平自身を除けば6名)のうち、2人の副主席を含む5名が、わずか3年あまりで姿を消した。連合参謀部参謀長(2015〜16年の軍事改革前は総参謀長)のポストは、文化大革命以来はじめての空席と言われる。
問題は、この空席を習近平が「いつ」「誰で」「どのように」埋めるのか——あるいは、埋めないのか——である。そしてその選択は、2027年秋に予定される次回の党大会(第21回)と、その先にある権力継承の問題に直結している。本稿では、中央軍委再建をめぐる複数のシナリオを検討したうえで、「埋めない」という選択が続くのであれば、それが軍の即応能力に対する習近平の認識について何を示唆するのかを検討する。最後に、人民解放軍内の議論を手がかりに、AIの導入と粛清との関係を論じたい。
空席の解剖:2名では会議すら開けない
まず、何が空いているのかを正確に押さえておこう。2017年の第19回党大会以来、中央軍委は主席1名、副主席2名、委員4名(連合参謀部参謀長、政治工作部主任、規律検査委員会書記、装備開発部長=国防部長が兼ねる場合が多い)の7名で構成されてきた。現在そこに残っているのは、習近平と張昇民のみである。副主席が1名、委員が3名、欠けている(張昇民は2025年10月、失脚した何衛東の後任として委員から副主席に昇格)。とりわけ連合参謀部参謀長——作戦計画と指揮の中枢——の不在は重い。
しかも、唯一の副主席である張昇民は、規律検査畑を歩んできた政治・紀律系の幹部であり、作戦指揮の経験をほとんど持たない。つまり現在の中央軍委は、軍事の「素人」である主席と、作戦指揮を本業としてこなかった副主席の2名だけが机を並べる、という極めて異様な状態にある。中国のネット上では「中央軍委は3人に満たず、もはやウィーチャットのグループ(朋友圈)も作れない」という皮肉が飛び交った。制度上、2名では党委員会としての正式な会議すら開催できない。
空席は頂点だけにとどまらない。中央軍委本体の委員も兼ねた連合参謀部参謀長と政治工作部主任が空席であること(政治工作部主任は苗華が2025年10月に党籍・軍籍を剥奪されたのち、中将の陳徳民が代理主任に就いている)に加え、調達や軍内法務監督といった軍委機能部門にも指導部の空白がある。戦区レベルでは、北部戦区が上将クラスではなく中将の代理司令員・代理政治委員のもとで運用されているとされ、いくつかの政治委員ポストが交代後に公表されないまま残るなど、空席と暫定人事の常態化がうかがえる。
習近平は空席をどう扱うか:三つのシナリオ
では、習近平はこの空席をどう扱うのか。大きく三つの選択肢がありうる。