NATO(北大西洋条約機構)のアンカラ首脳会合が7月7-8日に迫るなか、創設から77年の米欧同盟は大きな曲がり角にある。首脳会合は同盟にとって結束を示す政治的な晴れ舞台だが、ドナルド・トランプ政権が続く間はもう開かない方がよいのではという声すら聞こえてくる。「トランプが本当に来るか」が問われ、「来ただけで」あるいは「最後までいただけで」成功だと胸をなで下ろすような状況は、控えめにいって異常である。
それほどまでに米欧間の信頼が崩壊している。その原因としては、米国によるロシアと手を結びウクライナを見捨てるかのような姿勢、NATOとEU(欧州連合)の加盟国であるデンマーク領のグリーンランド領有の要求、同盟国に対する厳しい関税措置、移民政策など欧州の内政問題への介入、そしてイラン戦争などが指摘できる。第2次トランプ政権が発足してからの1年半だけでも、信頼崩壊の原因はすでに山積み状態だ。
NATOの歴史は危機の歴史であり、米欧対立自体は決して目新しくない。しかし、たとえば冷戦期でいえば、ソ連が脅威であることは共通の前提としつつ、それにいかに対処するかという手段に関する対立だった。しかし今日発生しているのは、ロシアが脅威なのか否かや、グリーンランドをめぐる武力行使の可能性など、欧州にとっての米国がもはや敵になってしまう(なってしまった)ことへの懸念である。この点で、以前と比べて危機の段階および性格が大きく変わったようにみえる。
他方で自国領土の防衛は、欧州各国政府にとって、ときの米大統領が誰であっても逃れられない責任であり、NATOの必要性は強く認識されている。米国自身も欧州との関係を打ち切ろうとしているわけではない。以前に懸念された米国のNATO脱退も、いまのところはほとんど話題にのぼっていない。それではNATOはどこに向かうのか。そこでトランプ政権が打ち出しているのが「NATO 3.0」である。以下では、この構想を出発点に同盟変革の現段階と課題を分析することにしたい。