テクノロジー

「認知戦」の将来(下):「領域横断作戦」という将来像

2022年8月1日

かつては無敵と思われた「戦略爆撃」や「サイバー攻撃」も、戦争の帰趨を左右するほどの効果は期待できなくなりつつある。同様に「認知戦」も、中国が狙う“戦わずして勝つ”ような戦略的効果を発揮するとは考えにくく、むしろ他の領域と組み合わせる作戦のひとつとして研究と理論化が進むだろう。(上編はこちら)(中編はこちら)

「認知戦」の理論は、中国、ロシア、米国などにおいて近年急速に発達している。特に、中国人民解放軍の幹部や軍事戦略家は、「認知戦」を「戦わずして敵を屈する」という孫子の思想を体現するものと述べており、戦争の特性を根本的に変化させ得る概念として捉えている。

 今般のロシア・ウクライナ戦争においても、デジタル手段が発達した現代において、戦略的に情報を発信して人々の認知に影響を及ぼし、自国世論や国際世論の支持を獲得することの重要性が示された。ただし、同時にロシア・ウクライナ戦争は、認知戦の優劣はあくまでも前提条件であり、最終的に戦争の帰趨を決するのは物理領域における戦闘であることを示している。

 本稿においては、「認知戦」の将来について考察を行う。「認知戦」は、人間の「認知」の領域において行われる戦いであるが、こうした「新たな領域」の出現を、人類はこれまでの歴史において何度も経験している。こうした過去の歴史を振り返ることにより、将来についての洞察を得ることができる。

宇宙、サイバー、電磁波へと拡大した戦闘領域

 人類史の原初から存在した戦闘の領域は、「陸上領域」である。カール・フォン・クラウゼヴィッツの見解に従えば、戦争の本質は「敵に対する意思の強要」である。人類は基本的に陸上において生活していることから、「陸上領域」を占拠することは、人間の意思に働きかける最も直接的な手段である。実際、人類の長い歴史において、ほとんどの戦争は「陸上領域」の争奪戦であった。……

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