医療・ウェルネス

風邪が「5類」で小児科はパンクしないか? 日本医療「官製談合」の本当の犠牲者

2025年3月3日

4月から“普通の風邪”が新型コロナやインフルエンザと同じ「5類感染症」に追加される。新型コロナ後に世界中で様々な感染症が流行している状況を考えれば、網羅的なモニタリング体制を整える意味では一理ある。だが、半数近くが赤字の小児科診療所はコスト増の直撃を受けるだろう。患者を中心に考え、医療提供体制を強化する視点が必ず欠けてしまうのはなぜなのか。

 日本の医療政策に欠けているものは何か。それは世界観と歴史観である。本稿で解説したい。

競争力を削ぐから「国産ワクチン」も実現しない

 コロナパンデミックを経験し、多くの国民が感染症に関心を抱いている。厚生労働省は、安全保障としてワクチンや感染症治療薬の国産化を進めているが、おそらく実現しないだろう。それは、多くの国内製薬メーカーが、そんなことには関心がないからだ。ワクチンや治療薬を開発するなら、国産に拘ることなく、海外でやった方がいい。2023年度の主要国内製薬企業の海外売り上げ比率は、トップの武田薬品工業の89%を筆頭に、12社が50%以上である。

 これは経済合理的な振る舞いだ。2023年の世界の医薬品市場は1兆6068億ドル(約233兆円)だ。日本は10.6兆円(約731億ドル)で、先進国の中では米国に次ぐ2位だが、米国の7102億ドルとは規模が違う。更に、今後も年率5%程度の成長が期待されている米国市場と、医療費抑制のためにマイナス成長の可能性が高い日本市場では状況が異なる。国産ワクチンや治療薬開発のために、日本に優先的に投資したい製薬企業はないだろう。この結果、国産ワクチンや治療薬の開発に従事するのは、海外で売れる薬が乏しい一部の国内メーカーが中心となる。厚労省の薬系技官に気を遣いながら、補助金を得るとともに、縮小する市場を奪い合う。前途は暗い。

 現在の日本の実力で、世界に通用する国産ワクチンや感染症治療薬を開発することは不可能だし、海外メーカーが開発したワクチンや治療薬を優先的に供給されることはない。それは、ルイ・ヴィトンの新商品が、ニューヨークの5番街より先に、銀座の店頭に並ぶことを期待するようなものだ。……

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