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苦境下の「日産」は本当に再建できるのか 46歳CEOに直撃してわかった知られざる経営の内幕

2026年5月2日


<span>苦境下の「日産」は本当に再建できるのか 46歳CEOに直撃してわかった知られざる経営の内幕</span>

世界の「NISSAN」が経営危機に苦しむ中、その再建を任されたのはメキシコ出身の46歳。生産拠点の縮小をはじめ“痛みを伴う決断”を余儀なくされ、「トランプ関税」などの外的要因も先行きに影を落とす。山積みの課題を乗り越え、かつての輝きを取り戻す日は来るのか。経済アナリストの森永康平氏の直撃に、苦境の原因や追浜地区の現状、今後の新車戦略まで、イヴァン・エスピノーサCEOが明かした。

※本稿は週刊新潮2025年10月16日号【経済アナリスト森永康平のビジネスリーダーにドロップキック!】の対談記事です。肩書等は全て掲載当時の情報です。

森永 CEOに就任されてから半年ほど経ちましたね。今までと生活ぶりは変わりましたか。

エスピノーサ たしかに変わったこともありますが、これまで日産で25年働き、日本にも10年近く暮らしていますから、生活自体の変化はそれほど大きくありません。一方、責任は強く感じています。厳しい状態の中でCEOを引き継ぎ、日産を〝あるべき姿〟に戻さなければならないという思いが、私を突き動かす原動力になっています。

森永 46歳という若さで大企業を率いるとなると、特に最初は苦労したのでは。

エスピノーサ 私は外からやってきた経営者ではなく、日産という会社についてはすでによく知っていました。CEO直下の会議体にも信頼するメンバーを選任できましたし、トップの移行期間は比較的うまくいったと思っています。でも重要なのは「それ以降」です。私が人生を捧げてきた日産の明るい未来を、なんとしても切り拓きたいですね。

森永 日産に対する強い愛が感じられます。しかし25年3月期に6700億円という巨額損失を出すなど、日産は非常に厳しい状況にあるように思います。この原因はどこにあるとお考えでしょうか。

エスピノーサ もちろん外的要因もありますが、ベースにあるのは、やはり日産が持つ構造的な問題でしょう。ここしばらくの日産は、「年間800万台」という目標を重視し、人員も含め、生産能力をとにかく拡大してきました。しかし生産台数はピーク時でも577万台。近年は350万台ほどにまで減っていますから、固定コストがとても賄いきれない状態だったわけです。
加えて、重要市場である北米を中心に、値引きをしてまでも在庫を整理しようとしたことで、利益率が押し下げられてもいました。北米市場におけるシェアが7.5%程度で推移していたときは利益率も高く、健全な状態だったのですが、そこからブランド力以上にシェアを高めようとしたことは、大きな問題だったと思います。

森永 やはり〝台数至上主義〟の弊害は大きかったわけですね。前経営陣はどうしてそのような無理な目標にこだわってしまったのでしょう。

エスピノーサ 当時の意思決定の現場にいたわけではないので、「よくわからない」というのが正直なところです。ただ遠くから見て感じていたのは、ルノーも含むアライアンス全体で、世界ナンバーワンを獲りにいこうという強い思いです。世界トップの台数を達成すれば、それこそがゴールという雰囲気がありました。ですが、ビジネスはそう簡単な話ではない。お客様にどんな価値を提供するか、社会にどう貢献するか、そういう〝存在意義〟も含めたバランスが大事だと思うんです。規模や儲けは「結果」でしかなく、ゴールにすべきものではないと私は思っています。

苦しい決断

森永 ルノー、三菱自動車との3社連合は、まさに世界の首位争いを繰り広げていましたね。トップが手に届く範囲にあったからこそ、そこにこだわってしまったということでしょうか。結果、現在の経営危機に繋がってしまったわけですが、御社が今年5月に発表した経営再建計画「Re:Nissan」に大きな注目が寄せられています。これからどうやって経営を立て直すのか、その柱を教えていただけますか。

エスピノーサ コスト構造の改善、商品戦略の見直し、パートナーシップの強化。この3つを柱に、2026年までに自動車事業を黒字化させることを目標にしています。

 一つずつ説明させてください。

 まずはコスト構造の改善。固定費と変動費をそれぞれ2500億円ずつ削減することを目指します。特に固定費については、世界全体の生産工場を17から10に集約させ、人員も2万人削減することを決めました。これは痛みを伴う苦渋の選択ですが、やらないわけにはいかないという判断です。そして「800万台」を前提にして広がっていたサプライヤー網をスリム化したり、そもそもの開発の基準を刷新したりもして、変動費の削減も行っているところです。

森永 それで合計5000億円のコストを削減すると。

エスピノーサ 2つ目の柱は、商品戦略です。市場へのアプローチの仕方も含め、全面的に見直しを行いました。日本やアメリカのほか、中東、メキシコなど、既に日産がプレゼンスをもっている市場に狙いを定め、それぞれに合った商品を展開していこうという考えです。日本市場ではたとえばフルモデルチェンジをした「ルークス」を9月から発売し、また人気の「エルグランド」の新型も、10月末から開催されるジャパンモビリティショー2025でお披露目します。北米では、プラグインハイブリッド車(PHEV)モデルの「ローグ」を今夏販売開始したところです。

 そして3つ目、パートナーシップの強化。日産では投資できない領域など、商品ポートフォリオを効率的に補完するため、ルノーや三菱自動車とのアライアンスを中心に、協力体制を強化していきたい。たとえば欧州の市場では、新型の「マイクラ」を今年投入していますが、開発も生産もルノーに委託する形をとっています。もちろん、ホンダとの協議も続いていて、知能化の技術やソフトウェアの部分などでどんな協力体制を築けるか、検討しているところです。

森永 やはり一つ目のコスト削減について、どうしても気になってしまいます。特に、横須賀市で一つの町を築いていた追浜工場の閉鎖は、日本人の間で大きく注目されていますよね。人員の整理や跡地のプランも含めて、お考えをお聞かせいただけますか。

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