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米国大統領の精神分析

2026年5月25日


<span>米国大統領の精神分析</span>

 戦争と圧政は悪。平和と自由は善。この崇高な原理に我は常に従っている。ゆえに自分は全世界を導く正義の英雄だ。ある米国大統領はきっとそう思って行動していた。

 ところが彼には内外に多くの反対派が居た。一種の悪魔たちであろう。不断に邪魔をする。日々是闘争。後ろを振り返る暇はない。いつも前を向いていなければ。英雄は眼前の敵と戦い続けているから英雄だ。もしも敵を一方的に破って大団円になったらそこで物語は終わってしまう。後期ロマン派の巨匠、リヒャルト・シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』では英雄は敵を撃滅した後に自らの業績を回顧して引退し、曲を結ぶ。そこに重大な真理があろう。現役で居続けたい英雄には完全なる勝利は無縁なのだ。従って敵は強いほどよい。しかも強敵はたくさんいた方がよい。頑張って覆滅しかけるのだがそこで次の強敵が現れるので勝利はお預け。歌舞伎の英雄譚では、白黒のつかぬうちに仮初の仲裁役が中に入り、英雄と強敵は後日の再対決を約して「本日はこれ切り」となって幕。それが定石。そうやって強敵を日々に相手にしながらケリをつけぬことを繰り返してこそ、英雄は今日も現役の英雄であり続けられる。

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