弁護士が「火に油を注ぐ」結果に
「週刊新潮」が掲載した佐藤のロングインタビュー(情報サイト「新潮QUE」でも公開)の中でも佐藤から橋本本人を非難する言葉は一切発せられていない。橋本に対する自身の言動への反省の弁は語られている。
一方で、フジテレビ側への不満を佐藤は隠さない。
「今回のトラブルはフジの制作陣が収拾できず、撮影現場にも来ないコンプライアンス担当の弁護士がいきなり介入してきたことで、火に油を注ぐ結果になったと思います」(「週刊新潮」7月16日号)
佐藤によれば、この弁護士からは橋本に何かあったら「佐藤さんのタレント生命にも傷がつきますよ」と「脅しのように」聞こえる言葉を投げかけられたほか、事の経緯の説明をしても相手には「何も響か」ず、「兎に角、僕が加害者だという結論ありきの聴取をされているように感じました」という。
捜査権も何もない人物が、ストーリーを決めたうえで一方的に聴取して相手に恐怖を与えることはコンプライアンス上問題ないのか、という疑問が当然わくところである。また結果として、この弁護士の姿勢に問題があったことは本人もフジテレビも認めて、謝罪を申し出たという(佐藤は拒否)。このプロセスが事態を深刻化させたという佐藤の指摘はもっともだろう。
本来、クライアントであるフジテレビの利益のために動かなければならない弁護士がなぜこのような振る舞いに出たのか。それは「コンプライアンス担当」だからという見方が妥当だろう。
短期的な視野でその場しのぎの対応をして、コンプライアンスを軽視したらどうなるか――フジテレビは身に沁みて知っている。それだけに、コンプライアンス担当者や担当弁護士としては、厳しい目で事態を把握しなければならない。ある意味で職務に忠実たらんとして、パワハラ尋問めいた行動に出たというところだろう。
法的な「正義」を信奉する人にとってこうしたプロセスは当然なのだろうが、「加害者」はもちろん、「被害者」が望んだかどうか怪しいほどのハレーションが発生し、結果、クライアントもダメージを受けるという流れになっている。
「それは会社の総意だったのか」
本来「クライアントの利益のために働く」ことを期待して弁護士を雇ったはずなのに、なぜこうなるのか。
危機管理コンサルタントの田中優介氏(株式会社リスク・ヘッジ代表取締役)の著書『地雷を踏むな 大人のための危機管理術』(新潮新書)には、「警察と弁護士は使いよう」という章がある。ここで田中氏は重要な局面での弁護士の重要性を指摘したうえで次のように述べている。
「法的な立場のみを重視すると、それ以外の要素を見逃してしまい、結果として損をすることがあるのです。こうした弁護士にブレーキをかけられるのは、依頼人であるあなただけなのです。中には自らブレーキを踏みながら動いてくれる弁護士もいますが、少数と言わざるを得ません。
(中略)
(弁護士を選ぶ際には)分野以外にも向き不向きがあるので、それを念頭に置いて選びましょう。こちらが被害者の場合は、喧嘩の強いタイプの弁護士。こちらが加害者の場合は、物腰が柔らかなタイプの弁護士」
フジテレビの件で言えば、客観的には現場の混乱を招いた責任者である同社は加害者側とも言えるはずなのに、なぜか佐藤のみを加害者とし、強い態度で取り調べまがいの聴取をしたこともミスマッチだと言えるのだろうか。
改めて田中氏に見解を聞いてみた。