ロシアによるウクライナ侵略に関して問われてきた主要な問題の一つが、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟問題である。ロシアがこれに強く反対し、ウクライナ侵略にあたっても、ウクライナの中立化を掲げている。それに対して、ウクライナは NATO加盟を目指してきたが、ロシアによる侵略が実際におこなわれるなかで、それを断念するに至っている。この展開に対しては、「それだったら戦争は回避できたはずだ」、「そんな簡単な話なのに妥協できなかったのか」という批判も聞かれる。しかし、ことはそれほど単純ではない。
そもそも、ウクライナの「中立化」とは何なのか。そのためには何が必要なのか。ここで強調すべきは、「中立化」と同じコインの裏側としてのウクライナへの「安全の保証」である。しかし、中立化と安全の保証は全くといってよいほど別のベクトルを有するものであり、いかに両立可能になるのかがみえてこない。
停戦協議の中心的課題であったこの問題については、3月末にトルコのイスタンブールでおこなわれた協議での実質的な前進が報じられたこともあった。しかし、直後に首都キーウ近郊の街ブチャでの市民の大量殺戮が明らかになり、停戦協議は後景に退くことになった。それでも、いずれ再び本格化する停戦協議において、この中立化と安全の保証の問題はまた焦点になる。改めて検証しておこう。
輪郭の定まらないロシアの「中立化」要求
ロシアがウクライナの中立化といった場合に、それが総体として何を意味するのかは、必ずしも明確ではないが、中心となるのがNATO加盟の阻止であることは当初から明らかだ。ウクライナのNATO加盟プロセスが実際には全く前進していなかったことに鑑みれば、NATO拡大阻止が今回の侵略の直接の原因であったとはいい切れない。それでも、ロシアがNATOを敵視してきたことは事実である。……