- プーチンの愛国心教育は新たな「メディンスキーとトルクノフの歴史教科書」にどう記されたか(上)
6.プーチン政治による国力回復を強調
さて、実際に教科書を見てみると、同書は1945年から1991年までのソ連時代を扱った第1部と、1992年から2020年代初頭のロシアを扱った第2部の構成で、計37章からなる。ハードカバーで、計448ページもあり、発行部数は5万部である。表紙には、ロシアが2014年3月に併合したウクライナ南部のクリミアとロシア本土を結ぶ「クリミア大橋」が描かれている。
生徒の学習意欲を駆り立てる工夫も施されており、各章にカラーの図表や写真が挿入されたほか、各種資料にスマートフォンで瞬時にアクセスできるようにQRコードも付された。また巻末には「ペレストロイカ」「グラスノスチ」といったソ連史に関わる語句や「NATOの東方拡大」「テロリズム」など現代ロシア情勢を学ぶ上で必要な語句が数行で説明されている。重要事件をまとめた年表も付されている。各章には練習問題もあり、学習内容を振り返ることができる。クラフツォフ教育相やメディンスキー大統領補佐官が度々指摘してきた「特別軍事作戦」は、最後の第37章で説明されている。
前述の通り、本教科書は「国家の立場を示している」から、そのスタンスは冒頭にある「はじめに」で明瞭に記述されている。特に、初代大統領ボリス・エリツィン時代のロシアに関する記述と比較すると分かりやすい。著者によれば、「1992年から1993年にかけてソ連の計画経済体制が最終的に終わりを迎えた。1994年から1999年に実施された経済安定化の試みは期待どおりの結果をもたらさ」ず、また「政治・経済分野における国家の役割が弱体化したことで、生産は継続的に減少し、人口の大部分の生活水準は急激に低下した」。エリツィン時代のロシアは混乱の時代として描かれている。……

