同時に進む「都市の繁栄」と「国民の貧困」
2025 年3月、ナイジェリアのラゴス州は州の GDP が 2590 億ドル(購買力平価ベース)となり、ケープタウン(南アフリカ)を抜いて、カイロ(エジプト)につぐ、アフリカ第2位の都市経済になったと発表した。一方、アフリカ開発銀行(AfDB)のアキンウミ・アデシナ総裁が同年5月に示した数字は対照的だ。ナイジェリアの1人当たり GDP は 824ドルと衝撃的な数値であり、単純計算で1カ月あたり70ドルを下回る。アデシナ総裁は、この数値は1960年の独立時を下回るとして「ナイジェリア国民は64年前よりも困窮している」と断言した。巨大都市の一部の成功と国全体の停滞。この強烈なコントラストは、ナイジェリア経済が抱える「都市の繁栄と国民の貧困」という二重構造を端的に物語る。
ナイジェリア大統領府はアデシナ総裁の発言について、60年代とはGDPの計算方法が違うためデータは不正確だと反論し、そもそも1人当たりGDPだけで国の発展を評価することに異議を唱えた。
それでも、IMF(国際通貨基金)によれば、2025年のナイジェリアの実質GDP成長率は3.0%(現地通貨ベース)と、サブサハラ・アフリカの平均を下回る見通しだ。さらに、年2.4〜2.5%という人口増加率を踏まえると、実質1人当たりGDP成長率はわずか0.55%にとどまる。これはつまり、ナイジェリアの経済成長が「人口の増加に支えられた量的な拡大」に過ぎず、生活水準の向上や雇用の質の改善といった「中身」が伴っていないことを示している。
雇用の質――「仕事はあるが賃金がない」経済構造
ナイジェリア国家統計局(NBS)の労働力調査(2024 Q2) によれば、就業者の 85.6 % が自営・家族就業(self-employed)で、企業などに雇われ賃金を得る被雇用者(employees)は 14.4 % にとどまる。さらに雇用全体の 93.0 % がインフォーマル就業で、都市部でも 90 %、農村部では 97.5 % に達している。……