政治

「ポスト・トランプ」に向け現在進行形で先鋭化、米国右派の「思想的内部対立」

2025年11月19日


<span>「ポスト・トランプ」に向け現在進行形で先鋭化、米国右派の「思想的内部対立」</span>

MAGAや新右翼といった米国の右派諸思想は、これまでトランプの人格的求心力の下で一体性を保ってきた。だが、「イスラエル支持と中東への介入」の是非が、その封じられた対立軸を炙り出す。有力なトランプ支持者同士が互いを攻撃している現状は、「トランプ陣営の崩壊の始まり」なのか。あるいは包括的な右派思想誕生の序章か。

 チャーリー・カークがユタ・バレー大学のキャンパスで凶弾に斃れてから2カ月。日本でも一部の専門家のあいだでのみ知られていたかれの名前は、今や多くのひとが知るところになっている。アメリカでは、カークに関連したニュースのとぎれる暇がないほど、さまざまなひとたちがかれについて語り、その語りがさらなる波紋を投げかけている。

 アリゾナ州フェニックス郊外でおこなわれたカークの葬儀では、ドナルド・トランプ大統領をはじめ政権の閣僚たちが列席し、その早すぎる死を悼んだ。悲劇的な暗殺によって、カークはアメリカで久方ぶりに誰もが知る右派の知識人という地位を死後に得た。しかもかれは、その言動や行動から極右と言って差し支えない人物だった。死後のカークの名声の高まりによって、MAGA派と呼ばれるトランプ支持の政治家や支持者たちのなかで、あるいは新右翼に分類される右派の新しい諸思想のあいだで、極右主義は存在感を高めつつある。

 そのMAGA派や新右翼であるが、カークの死をきっかけに、それら陣営が結束力を高めているかと言えば、必ずしもそうではない。MAGA派にしても新右翼にしても、その旗印のもとにはさまざまな潮流が結集しており、そもそもからして一枚岩ではなく、内部に潜在的な対立軸をいくつも実際には抱えてきた。そのなかでも、ある対立軸の先鋭化を契機として、現在、内部ではこれまでになく対立が激しくなりつつある。その対立軸とは、アメリカによるイスラエル支持と中東への介入である。

著名なトランプ支持者同士で非難の応酬

 アメリカは世界の警察官であることをやめるというメッセージを常々発してきたトランプが、政権を奪還したあともイスラエルを擁護して中東への介入をやめないことをめぐっては、第二次トランプ政権が発足して以降、トランプに近い人びとのなかでも不満が漏らされてきた。その一方で、福音派やあるいはユダヤ系の人びとを中心に、イスラエルを半ば例外とする政権の対応を支持する声もトランプ支持層の一部には根強く、イスラエルをめぐる対立は徐々に顕在化してきた。

 この対立をひとつ象徴するのが、マージョリー・テイラー・グリーンとローラ・ルーマーそれぞれの発言、あるいは両者のSNS上での直接的な応酬である。グリーンと言えば、共和党の連邦下院議員のなかでも、もっともトランプに忠誠を誓ってきた人物のひとりである。しかしグリーンは第二次トランプ政権発足後、2025年の夏頃から、トランプを直接批判することは注意深く避けてきたものの、共和党議員の同僚や第二次トランプ政権への批判を強めてきた。たとえばグリーンは7月下旬、ガザの人びとのあいだで起きている飢餓状態を「ジェノサイド」であり「人道的な危機」であるとSNSに書き込み、まるでリベラルな政治家のようなその発言は、驚きをもって受けとめられた。11月、外交政策に注力しすぎているとトランプを諫めたグリーンにたいしてトランプは、「彼女は素晴らしい女性だが、どうなってしまったのかわからない。彼女は迷走しているように思う(She's lost her way, I think)」と発言したばかりか、それで終わらず、ついにはグリーンへのこれまでの支持を撤回するに至った。……

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