62億円の買い物が、6年後には110億円に――。2022年、実業家の前澤友作氏が、とある一枚の絵画をオークションで売却したときの話である。差額にして約50億円。美術鑑賞の“おまけ”と呼ぶには桁違いの利益だが、紛れもなく現実に起こったことだった。
世間ではもっぱら、新NISA制度を活用した株式投資がかつてないほどの活況を呈している。株価の乱高下が大きな騒ぎになるのも、それだけ投資熱が高まっていることと無関係ではなかろう。
あるいは少し前には、不動産や仮想通貨の値動きが日々の話題の中心にあったことも、まだ記憶に新しい。
こうしたはやり廃りとは距離を置き、知る人ぞ知る投資マーケットを築いているのが、「アート」である。美術品の市場について分析する「Art Market Report」の2024年版によれば、2023年の世界のアート市場の規模は約9兆6100億円と、一大マーケットをつくり上げている。世界的な金融緩和の影響を受け、富裕層の余剰資金が美術品に流れ込んだことも背景にあるとされる。……