医療・ウェルネス

「医師」以外は蚊帳の外:コロナ対策に「数学者」の研究成果を活用せよ

2021年6月4日

「専門家の意見」と菅首相は繰り返すが、医師と医系技官の間だけで決まる日本のコロナ対策には決定的な死角が生じている。情報工学の活用がないために、ゲノム解析からのアプローチや感染リスクのモデル研究がなおざりとなり、対策は世界とかけ離れた隘路に入ってしまった。

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)対策で日本は一人負けだ。科学技術先進国で、世界に誇る医療システムを有する日本が、なぜ、こんな状態に甘んじるのか。私は、数学者を活用できていないからだと考えている。一体、どういうことだろうか。本稿では、日本のコロナ敗戦の真相をご紹介したい。

 日本のコロナ対策の特徴は、「お医者さん」が仕切っていることだ。医師がメンバーのほぼすべてを占めていた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が、経済学者なども含む「新型コロナウイルス感染症対策分科会」へと衣替えしても、その実態は変わらない。

 この状況は世界とは対照的だ。今年1月、米ジョー・バイデン大統領が科学技術政策局局長(大統領科学顧問)に任命し、そのポストを閣僚級に格上げしたエリック・ランダーはその象徴と言えるだろう。ランダーはマサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の教授を務めるゲノム研究の専門家だが、元は数学者である。高校時代には数学オリンピックに出場し、銀メダルを獲得しているし、プリンストン大学卒業後は、数学者として符号理論を研究している。その後、脳のシステム生物学の研究を経て、ゲノム研究者に転身した。

「シークエンス屋さん」を多数抱える欧米医薬企業

 バイデン大統領がランダーを科学技術政策のトップに据えたのは、最優先課題であるコロナ研究をリードするのが、ゲノム研究者たちだからだ。例えば、mRNAワクチンの開発に成功した独バイオンテック、米モデルナは、もとはがん治療ワクチンを開発するベンチャー企業だった。このような企業に集まる研究者の多くが、関係者の間では「シークエンス屋さん」と呼ばれる人たちだ。……

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