東京五輪開幕まで3週間を切った。着々と準備が進む反面、世界各地から安全性について様々な意見がでている。5月25日には、米『ニューイングランド医学誌』が「五輪参加者をコロナから守る:早急にリスクに応じた対策を講じる必要がある」、6月12日には英『ランセット』が「東京五輪を世界はもっと議論しなければならない」という論考を掲載した。いずれも五輪を介して、コロナが拡大するリスクがあり、選手と関係者を守るには、現状の対策では不十分で、さらに議論する必要があるという内容だ。
『ニューイングランド医学誌』と『ランセット』は世界の医学界をリードする二大医学誌だ。両誌が、このような論考を掲載するのだから、東京五輪は安全に開催することが難しいというのが、世界の専門家のコンセンサスになっていると言っていい。
6月18日、さらに尾身茂・コロナ対策分科会会長をはじめとした26人の日本の有志が、政府と五輪組織委員会に対して、感染リスク低減のために無観客試合を求めた意見書を提出した。多くのメディアは、尾身氏らの提言を肯定的に報じている。例えば、『朝日新聞』は6月22日の社説で「五輪の観客 科学置き去りの独善だ」と政府の対応を批判している。
私は、このような議論に違和感を抱かざるを得ない。それは、尾身氏らの提言により、論点が観客をどうするかに矮小化されてしまったからだ。……