ウクライナ危機でロシアがとったエスカレーション抑止戦略は、台湾有事や朝鮮半島有事においても当てはまる。現状変更勢力である中国・北朝鮮にとって、有事において米国の介入を阻止することは決定的に重要だ。そのため、米軍の作戦支援基盤となる日本社会をミサイルで脅し、「米国(と台湾・韓国)を支援しなければ、日本を攻撃対象とすることはない」として、日本世論の「巻き込まれる恐怖」を増幅させようと揺さぶりをかけてくることは容易に想像できる。そして、その脅しが通用しなければ、実際に航空基地や港湾などを攻撃して、日本の支援能力を無力化することを考えるであろう。
こうした中国・北朝鮮による心理的恫喝や物理的妨害に屈しないためには、日米の抑止力が効果的に発揮される状態を維持・強化しておく必要がある。そのためには、どのような具体策が有効なのか。
その一例として、NATO(北大西洋条約機構)型の「核共有(nuclear sharing)」を日本でも取り入れるべきとの主張が度々なされてきた。
「核共有」とはどのようなメカニズムか
核共有とは、NATO加盟国の一部に米国が管理する非戦略核兵器[1](B61核爆弾)を平時から前方配備しておき、危機・有事が発生した場合には事前に策定した共同作戦計画に基づいて、米国大統領の許可の下で核爆弾を供与、同盟国の核・非核両用機(Dual Capable Aircraft:DCA)がそれを搭載して核攻撃を行うというメカニズムである。米・NATO間では現在でも、100発程度とされる非戦略核の配備と、その協議枠組みとしての核計画部会(Nuclear Planning Group:NPG)が継続されている。……