ある日突然、母親に「あなたはお父さんの子どもではない」と告げられた子どもの衝撃が想像できるだろうか。両親に騙されていた。自分が何者か分からない。精子の提供者を知りたい。けれど情報がない――。喪失感や怒りに苛まれている子どもが、日本にも少なからず存在する。
日本では70年以上も精子提供による非配偶者間人工授精(AID)が行われ、近年は卵子提供で生まれる子どもも増えているが、精子/卵子提供で生まれた子どもが提供者の情報を求める「出自を知る権利」に関しては、未だに法整備が進んでいない。2020年12月に成立した生殖補助医療法では、民法の特例として生まれた子どもの父と母を明確にした以外は具体的な議論が先送りされ、附則に「2年を目途に検討する」と記された。その2年が経過した今年の通常国会では、生殖補助医療法改正(あるいは新法の制定)が1つの焦点となりそうだ。
そこで、長年にわたって生殖補助医療の当事者にインタビューを行ってきた明治学院大学社会学部の柘植あづみ教授とジャーナリストの大野和基氏に生殖補助医療法の問題やオーストラリア・ビクトリア州の先進的な取り組み、具体的な当事者の事例などについて語ってもらった。……