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選挙結果がもたらした日米同盟の不透明な将来

2024年11月8日

アメリカ大統領選の混乱は回避されたが、偽情報の拡散は「前例のない量」だったとの指摘がある。民主主義がファクトチェックなどで強靭性を増す一方、これへの攻撃も苛烈化してきた。不安の中で生まれた第二次トランプ政権が、「米国第一主義」を前面に押し出し、日本に防衛費の負担増や、日本製鉄のUSスティール買収を取り下げるよう要求することもあり得るだろう。その時、アメリカと「対等な国」となることを求める石破首相の対応は、いっそう難しいものとなる。日米同盟は、普天間米軍移設問題が紛糾したとき以来、最大の危機と困難に直面するかもしれない。

 2024年11月6日未明のフロリダ州ウェストパームビーチの会場に、ドナルド・トランプが登場した。まだ一部で開票作業が続く中で、ノースカロライナ州や、ジョージア州、ペンシルベニア州といった激戦州といわれる7州で次々とトランプ共和党候補が勝利を収めていった。大統領選挙勝利に必要な270の選挙人の確保が確実となる中、トランプ候補は次のような勝利宣言を行った。「今夜、私たちは歴史を作った。今まで目にしたことがない政治的な勝利だ。第47代大統領に選出されたという素晴らしい名誉を米国民に感謝したい」。

 大統領経験者が落選後に大統領選挙で勝利するのは、グロバー・クリーブランド以来132年ぶりとなる。また、来年1月20日の大統領就任時には78歳7カ月となり、4年前のジョー・バイデン大統領就任時を超えて、最高齢での大統領就任となる。当初は、接戦の結果として開票作業の混乱や、開票結果をめぐる暴動など、新大統領確定までに時間がかかる可能性も指摘されていたが、想定以上に迅速で円滑な次期大統領の「確定」となった。

 アメリカ大統領選挙の結果の影響は、アメリカの国境の内側に留まることはない。アメリカは、世界最大の軍事大国であり、最大の経済大国であり、技術大国でもある。アメリカ大統領選挙の行方と、新政権の成立は、その主要な同盟国である日本を含めて、世界の多くの諸国にも巨大な影響を及ぼす。さらには現在進行中のロシア・ウクライナ戦争や、イスラエル=ガザ紛争の今後にも、大きな影を落とすことになるだろう。

 2024年は、「選挙イヤー」と呼ばれ、世界の3分の2ともいえる諸国で選挙が実施されることになっている1。1月7日のバングラデシュ総選挙、そして同月13日の台湾総統選・立法院選で幕を開けた2024年の「選挙イヤー」は、10月の日本での衆議院選挙、そして11月のアメリカ大統領選挙を受けて終盤に入った。この一年間の選挙の結果、世界はどのように変わっていくのだろうか。ウクライナや中東での戦争にこれらの選挙はどのような影響を及ぼすのであろうか。

民主主義の強靱性と脆弱性

 アメリカの大統領選挙など、個別的な選挙の結果が重大な意味を持つことは言うまでもないが、それと同時に、選挙の過程それ自体もまた大きく注目されていた。すなわち、アメリカや日本、イギリス、台湾のような民主主義体制をとる諸国や地域において、偽情報の拡散や、外国からの選挙干渉が深刻な問題となっているからだ。たとえば米大統領選挙に関連して、投票日となる11月5日に、米連邦捜査局(FBI)は、偽造された動画や、事実ではない偽情報の拡散の激化に警戒を強めて、その選挙への影響を警告していた。また、国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティー専門機関(CISA)のジェン・イースタリー長官は、今年の選挙は外国の敵対勢力による「前例のない量の偽情報」に直面していると警告をした2

 影響力工作や偽情報拡散などに詳しい市原麻衣子一橋大学教授は、次のように説明する。「影響工作の指揮系統として政府機関が中心的な役割を担っていることは論をまたない。他国への選挙介入や社会の分断などを行う中心的な国家としてのロシアと中国は、いずれも影響工作を担う機関を政府内に複数持つ。テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)のグローバル偽情報ラボ(Global Disinformation Lab)によれば、ロシア政府内では連邦保安庁(FSB)、対外情報庁(SVR)、連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の3機関が影響工作の領域で活動をしている3」さらには、「中央で形成されたプロパガンダは、大使館や外交官によっても拡散されている」ために、「その影響は無視できない」と述べる。……

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