※本稿は「週刊新潮」2026年3月26日号に掲載された特集を元に再構成したものです。また、年齢や肩書、年代表記等は当時のものです。
営業で一番厄介なのは「感情の迷い」
「仕事は厳しい一方、入社2年目には年収が1000万円に到達し、給料日には大金がバコンと入ってくる。そのギャップを、仲間内ではギャグ混じりに“スーツを着た風俗嬢”と呼んでいました。やりたくないけれど金のために我慢してやっている、という意味です」
そう語るのは、「アレグリア」代表取締役の小野松健太氏(30)。2018年に同志社大学を卒業し、キーエンスに入社した氏の初任地は岡山の営業所だった。
「私は地元が北海道で、大学が京都だったので、岡山には知り合いがいません。そんな中、ひたすら営業電話と訪問を繰り返し、冷たい音が鳴り響く工場に通い詰める日々は、人の心がなくなっていく感覚を伴うものでした。超効率化されたスケジュールの中で働くと、人間らしさが失われていくのです」
とはいえ、入社当初から仕事に対する拒否感があったわけではない。
「最初に営業電話を『1日最低150分かけろ』と言われた時は特に驚かず、『いけるかな』と思いました。150分電話しないと営業訪問のアポが取れず、外出できません。早く外出したいという思いで電話をかけ続けていました」(同)