<span>日本は財政破綻しないのか――30年続いた「国債危機論」と黒田日銀への意外な評価</span>
黒田東彦元日銀総裁

日本は本当に財政危機に向かっているのか。そして、黒田日銀の異次元緩和は成功だったのか。日本経済を長年研究してきたポール・クルーグマン氏は、「日本は財政破綻する」という見方に繰り返し異議を唱えてきた。一方で、黒田東彦総裁時代の日銀については、現代の中央銀行史に残る重要な実験だったと評する。財政赤字と金融緩和をめぐる議論を、いま改めて検証した。(取材・構成 大野和基)

日本の財政状況は楽観論者が主張するほど健全でもなく、悲観論者が主張するほど危険でもない

――日本は「財政赤字」と「国の借金」への恐怖が強く、積極財政への抵抗感があります。しかしあなたは日本国債危機論に懐疑的でした。日本が円という自国の通貨を持っている限り、破綻することはないとも言っておりました。現在の日本の財政状況はかつてよりも改善されているのか、悪化しているのか、国際比較の中でどう見ていますか。

 日本に関する議論で私が常に印象に残っているのは、多くの人が予測したことと実際に起こったこととの間に、途方もない隔たりがあることです。30年以上にわたり、アナリストたちは日本が財政危機の瀬戸際にあると繰り返し警告してきました。彼らはGDP(国内総生産)に対する政府債務比率の上昇を指摘し、最終的には投資家の信頼が失われ、金利が急騰し、政府は債務超過に陥ると主張しました。しかし、これらの予測は外れてきました。この事実だけでも、私たちが深く信じてきたいくつかの前提を再考する必要があるでしょう。

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