連載|Foresight

Vol. 181

米朝交渉再開を見据え、連日の「金与正」談話で外交攻勢(2026年8月16日~8月22日)

2026年8月24日


<span>米朝交渉再開を見据え、連日の「金与正」談話で外交攻勢(2026年8月16日~8月22日)</span>
「祖国解放」81周年記念の水泳競技を娘とともに観戦する金正恩国務委員長(朝鮮中央通信HPより)

8月19日と20日に金与正の談話が発表された。トランプ米大統領が指示した米韓合同軍事演習の縮小について「論評する価値もない」としたのは、縮小や短縮ではなく訓練の永久廃止などを求めていることを示唆する。なお、談話は朝鮮中央通信で配信され『労働新聞』には掲載されていない。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

トランプと金正恩の意思疎通「私はまったく知らない」

 金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会総務部長による対外メッセージが立て続けに発表された。19日、朝鮮中央通信は金与正の「立場表明」を報じた。16日にドナルド・トランプ米大統領が米韓合同軍事演習の縮小を指示し、17日にホワイトハウスで記者団に対して金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が対話の要請に応えたと主張したことに対する反応である。18日には、トランプが米朝首脳会談を今秋にも実現するよう側近に働き掛けているとの米紙『ウォールストリートジャーナル』報道もあった。

 金与正の「立場表明」は長文に及んだ。ロシアに対する全面支持の姿勢を確認した後、「ゼレンスキー一味が考案して流布したわが軍の『追加派兵』説は、まったく事実無根のキーウによる自作劇であること、そしてウクライナ事態の発端と長期化の責任は、全面的にその前提を整え、条件を育てている米国と西側にある」とした。追加派兵そのものを否定したとも捉えうるが、否定の対象は派兵そのものではなくウクライナの“考案”した解釈だとすれば、ロシアとの協力は包括的戦略的パートナーシップ条約に準じた「主権的権利行使の合法的領域」「同盟締約国としての義務」であるとの主張にも映る。

 次に非難の矛先は日本へと向けられた。「日本の無分別な軍事的膨張の試みを、潜在的かつ将来的な脅威として深刻に注視している」のだという。「日本が間違った選択を企図するならば、即時に生存不可能な殲滅的猛撃を直接受けるようになることを意味する。日本の軍事的進化は、蓑を着て火事場へ入るような自滅行為だ」と警告した。日本の防衛力強化に対する不快感をあらためて明確にした形である。

 そのうえで米韓合同軍事演習の縮小に対して「論評する価値もないと見ており、まったく興味を感じない」とした。北朝鮮側の要求は軍事演習の縮小や短縮ではなく中止、ひいては永久廃止以上であることを示唆しており、米国に対してより大きな譲歩を求めていると言える。

 しかも、「朝米両国の指導者間に意思疎通があったというワシントン発のニュースについて言うならば、私はまったく知らないことであり、おそらくわが最高指導部の対外政策に関連して私が知らないでいる唯一の事案であろう」として、トランプ大統領の発言が虚偽であることを匂わせた。

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