連載|政治

Vol. 189

中朝国境の鴨緑江に架かる「開かずの橋」が12年越しの開通(2026年10月11日~17日)

2026年10月19日


<span>中朝国境の鴨緑江に架かる「開かずの橋」が12年越しの開通(2026年10月11日~17日)</span>
開館した第2経済委員会国防革命博物館を娘とともに見て回る金正恩国務委員長(朝鮮中央通信HPより)

北朝鮮の新義州と中国の丹東を結ぶ朝中鴨緑江橋(中国名:中朝新鴨緑江大橋)の開通式が挙行された。工事自体は2014年に完了していたが、12年間にもわたって「開かずの橋」であった。9月には豆満江のロシア国境に架かる「ヤコフ・ノビチェンコ名称豆満江自動車橋」も開通しており、中ロとのバランス外交を象徴する出来事となった。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

今年の党創立記念日は太陽宮殿を参拝せず

 朝鮮労働党が創立81周年を迎えた10月10日、平壌(ピョンヤン)体育館で慶祝公演が行われ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が娘や妻を伴って鑑賞した。

 また、11日には金正恩出席のもと、第2経済委員会国防革命博物館の開館式が行われたことも党81周年を記念したものであった。金正植(キム・ジョンシク)朝鮮労働党中央委員会第1副部長が演説し、この博物館を金正恩の「偉大な愛国精神と国防建設路線、非凡で特出した領導力の集合体」だと表現した。金正恩は館内を見て回りながら、「わが党にとって世界最強の国防工業を建設することはしかるべき天職」だとして、その業績を誇示する博物館の意義について述べた。なお、金正恩は錦繍山(クムスサン)太陽宮殿への参拝を行わなかった。

 昨年は80周年だったため、閲兵式(軍事パレード)が行われ、中国の李強国務院総理、ロシアのドミートリー・メドベージェフ安全保障会議副議長、ベトナム共産党のトー・ラム書記長も出席していた。金正恩による太陽宮殿参拝もあった。

三代世襲と核武装の正当性を強調

 17日の「打倒帝国主義同盟」(略称「トゥ・ドゥ」)結成100周年を前後して、数多くの記事が掲載された。特に14日付は第1面から第2面にかけて、董泰官(トン・テグヮン)論説員を筆頭とする4人による長文論説「主体革命偉業は万代に不滅であろう」が掲載された。金日成(キム・イルソン)主席の革命路線が、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長、金正恩へと一貫して継承され、核武力の完成と社会主義の全面的発展によって新たな段階に入ったというものである。

 論説の第1の柱は、1926年に当時14歳の金日成が「トゥ・ドゥ」を結成したとされたときから現在までの100年間、朝鮮革命が一貫して同じ理念と路線を堅持してきたという主張である。北朝鮮では、1926年10月17日、金日成が「反帝・独立・自主」の理念の下で「トゥ・ドゥ」を結成したことを主体革命の出発点と位置付けている。同盟の当面の課題は「日本帝国主義」の打倒と朝鮮の独立であり、最終目的は朝鮮における社会主義・共産主義の建設、さらには世界の共産主義化にあったと説明する。

 論説は、主体革命が100年間継続した根本的な理由を三代の最高指導者に求めている。「朝鮮革命が実に一世紀を最もまっすぐな一つの道として揺るぎなく継続することができた根本的秘訣は、代を継いで偉大な首領を戴いたことにある」として、最高指導者の権威と指導の継承が体制存続の決定的条件として説明されているのである。

 第2の柱である「偉大な新時代」では、金正恩時代の歴史的成果として、核兵力を中心とする軍事力強化が強調された。現在の国際情勢を「帝国主義による力の政策が横行する世界」と捉え、国家の自主権を保障するためには強大な軍事力が不可欠だと主張する。具体的な成果として、経済建設と核武力建設の並進路線、国家核武力の完成、核武力強化政策の憲法化が挙げられた。

 また、軍事力強化と並ぶ金正恩時代の成果として、「社会主義の全面的発展」が挙げられた。地方発展、農村振興、住宅建設などで成果があったとされ、首都と地方、地域間、階層間の生活格差を解消することが社会主義の目標だとしている。

 第3の柱である「最後まで進むべき道」では、今後の革命継続に向けた具体的課題が提示された。最高指導者と党・人民との「一心団結」の強化、金正恩の革命思想を指導的指針とした党の指導力強化、各分野で発展を加速させる「社会主義の全面的発展」、人材育成、反帝闘争と国防力強化の継続である。「帝国主義」との対決は長期的課題と位置付けられた。

「トゥ・ドゥ」100周年の記念論説であるにもかかわらず、その歴史的回顧には重点が置かれず、金正恩の指導力による反帝闘争の継続意思を示すものであった。

開通式への出席者が示す「ロシア重視」

 16日付第2面には、北朝鮮の新義州(シニジュ)と中国の丹東を結ぶ朝中鴨緑江(アムノッカン)橋(中国名:中朝新鴨緑江大橋)の開通式が挙行されたことについての記事が掲載された。国境河川である鴨緑江にかかるこの橋は、「歴史の試練の中でもその本態をしっかり守ってきた朝中友好の不抜の生命力と発展ぶりが凝縮した建造物」だとされたが、実際には2014年に工事は完了しており、12年間にもわたって「開かずの橋」であった。

 15日の開通式には、北朝鮮側から楊明哲(ヤン・ミョンチョル)党平安北道委員会責任書記、李正革(リ・ジョンヒョク)平安北道人民委員会副委員長、李龍男(リ・リョンナム)駐中北朝鮮大使、馬宗秀(マ・ジョンス)駐瀋陽北朝鮮総領事らが、中国側から中国共産党遼寧省委員会書記、遼寧省人民政府副省長、王亜軍駐朝中国大使らが出席した。また、朴泰成(パク・テソン)内閣総理と李強国務院総理がそれぞれビデオメッセージで祝辞を述べた。

 9月7日に開通した朝ロ間の「ヤコフ・ノビチェンコ名称豆満江自動車橋」については、羅先(ラソン)の式典会場に金徳訓(キム・ドックン)第1副総理、ハサンにロシアの天然資源環境相、運輸相、極東・北極圏発展相が直接出向いていた。このことに鑑みれば、ロシア重視という北朝鮮の姿勢は明確である。

 朝中鴨緑江橋の開通が長年滞った理由は必ずしも定かではないが、中国との経済協力の窓口を担っていた張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長が2013年12月に処刑されたことや、北朝鮮の核開発をめぐる習近平政権との不和、2020年以降の新型感染症による国境封鎖など複数の要因が関係しているものと考えられる。朝ロ間の自動車橋が先月竣工したばかりであることから、今回の開通式は自主路線追及のための対中ロバランス外交を象徴する出来事となった。

韓国による極超音速兵器の実験を疑問視

 14日、共和国ミサイル総局の張昌河(チャン・チャンハ)総局長は、韓国が極超音速滑空飛行体の試験を実施したことについて、朝鮮中央通信社記者の質問に答えた。8日に韓国が極超音速滑空飛行体の発射実験を初めて行ったと写真を示しながら発表したことに対して、「極超音速飛行ができなかったかもしれない」と述べたのである。韓国の兵器開発を批判することに重きを置くのではなく、兵器実験に対して疑問を呈する異例の報道となった。

 朝鮮中央通信の記者が、「世界的に多くの国が極超音速兵器システムの開発に競争して取り掛かっているそうだが、それはどうしてなのか」と質問したことに対して、張昌河が「そのような問題は私に質問するのではなく、関心があれば軍事技術雑誌を見るほうがよかろう」と突き放したことも報じられた。珍しく臨場感のあるやりとりの描写で目を引いたが、この報道は『労働新聞』には掲載されなかった。
 

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