政治

「認知戦」の将来(中):ウクライナを巡る「米露」攻防戦

2022年7月31日

2014年のクリミア併合では、ロシアは「戦略的ナラティブ」を巧みに使って成功した。だがウクライナ侵略では、米国が「事前反論戦略」という新たな概念を用いて封じ込め、ウクライナも正確な情報発信で国際世論の支持を得た。(上編はこちらから)

 前回見てきたように、中国、ロシア、米国は、「認知戦」と呼ばれる戦い方や、それに相当する概念を近年急速に発達させている。次に、こうした「認知戦」が今般のウクライナ戦争においてどのように実践されたか、その教訓について分析する。

ロシアの「認知戦」を封じた米国の「事前反論戦略」

 ロシアは、現在進行中のウクライナ戦争に関し、国際社会からの強い非難にさらされており、「認知戦」という側面において敗退している。2月24日の侵攻開始に伴い、ロシアは「抑圧されるロシア系住民を救出するための特別軍事作戦」を行うと主張した34。これは、前述の2014年に用いられた「戦略的ナラティブ」と類似しており、国際社会に対する正当性の主張を意図としていたと考えられる。しかし、この「戦略的ナラティブ」は、ロシア国内においては機能しているが35、国際世論にほとんど影響を与えてはいない。

 このようなロシアの「認知戦」の失敗の背景には、米国とウクライナによる巧妙な「認知戦」がある。この点に関しては、米国の政治・外交、安全保障、インテリジェンス関係者の間で、ジョー・バイデン政権が行った「事前反論戦略(Prebuttal Strategy)」36に大きな注目が集まっている。これは、秘密情報を開示することにより、ロシアの主張に対してあらかじめ反論するという、これまでにない新しい手法である。

 ロシアがウクライナ侵略を開始する前の週末(米国時間2月18日16時54分)、記者会見においてバイデン大統領は、……

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