- なぜ司法は酒鬼薔薇聖斗の事件記録を捨てたのか――「知る権利」の蚊帳の外に置かれる少年事件
神戸連続児童殺傷事件をおこした酒鬼薔薇聖斗こと少年A。
すでに少年院を出て、私たちと同じ社会に暮らすAは、はたして更生しているのだろうか――。
じつは、法律には「更生」の定義がない。更生の意味合いは、きわめて曖昧で、抽象的でもある。それだけに、何をもって更生したといえるのか、はっきりしない。
それでも国が更生のために、絶対に必要だとする条件がある。
再犯をしないこと、だ。
かつて刑法に触れる行為をした少年に、再犯をさせないこと。それが、国の更生保護政策の最優先課題として位置づけられている。
少なくとも、Aは再び人を殺めるような「犯罪」はしていない。
だが、一般社会で暮らす私たちにとって、更生とはどのようなものだろう。再犯していないこと=更生している、と受け止める人が、どれほどいるだろうか。
おそらく、そこにはズレが生じる。少年Aの存在が、私たちを揺さぶる理由は、彼の行動が、まさにそのズレを突くからだろう。
再犯こそしていないが、本当にAは大丈夫なのか――と。
少年Aは、更生しているのか。それを考えるにあたって、まずはAが社会復帰してから、今に至るまでの流れをたどる。
21歳で社会にでた少年Aのその後
一般的に、少年院に入った少年は、二段階で社会復帰する。いったん少年院から仮退院をして、国に保護観察される期間を経て、それから正式に退院をする――というのがセオリーだ。復帰までに助走の時間をもうけ、社会になじませる(社会内処遇という)。Aについても、この手続きが踏まれている。
Aは、2004年3月10日に関東医療少年院を仮退院した。彼とじかに面談した関東地方更生保護委員会が、「社会復帰に問題なし」と判断したからだ。事件当時14歳だった少年は、このとき21歳になっていた。