「親切な男でいるのもここまでだ!」
「目には目を、歯には歯を」とは、ドナルド・トランプ大統領が一番好きな聖書の一節だ。マタイによる福音書5章38-42節で確認できる。5月28日に、記者から「TACOトレード(Trump Always Chickens Out=『トランプはいつも尻込みする』に由来、前回の本コラムをご参照)に関し質問を受けた後、トランプ氏はこの言葉を実践した。5月30日、ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外で行った演説で、鉄鋼・アルミ関税の25%から50%への引き上げを発表。トランプ大統領を煽れば、「倍返し」の憂き目に遭うと印象付けた。
同じ日に、トランプ氏は中国に対しても5月に合意した内容を順守していないとして、牙を剥いた。米中は5月10-11日の閣僚協議で90日間にわたる115%の関税引き下げに合意した。4月2日以降に中国が講じた非関税報復措置の一時停止あるいは撤廃も合意され、米国側の理解では、レアアースの輸出禁止はこれに含まれているはずだった(詳細は本コラム5月16日をご参照)。しかし、トランプ氏は「中国がこの合意を完全に破った」「親切な男でいるのもここまでだ!」と猛批判。その後、記者団には近いうちに中国の習近平国家主席と電話会談を行うと述べたものの、怒りの矛先を向けたのは明らかだった。
中国にとってハーバード大は「党の学校」?
もっとも、米国も5月12日の合意発表以降、中国に対し強硬な措置を講じてきた。ニューヨーク・タイムズ紙は5月28日、トランプ政権が米国の航空宇宙技術や半導体の対中輸出を制限する決定を下したと報道。中国国有航空機メーカー、中国商用飛機(COMAC)の商用ジェット機「C919」に使用する製品や技術を米企業が販売する許可を一部停止したという。「C919」は単通路の旅客機で、部品の実に約4割は、米国や西側諸国など海外からの供給に依存しているとされる。また、半導体の電子設計自動化ツール大手ケイデンス、シノプシス、シーメンスなどが提供するコンピューターチップ設計向けソフトウェアの輸出許可も停止する方針と伝えた。……