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民主党はどこに行くのか――ニューヨーク市長選挙予備選の衝撃

2025年7月7日

主流派は“進歩的になりすぎた”と言い、左派は“中道に寄り過ぎた”と言う。民主党は大統領選の敗因をいまも総括できずにいる。マイノリティーの背景を持つ33歳の「民主社会主義者」の勝利は極めて進歩的な土地ゆえだが、勝者マムダニが唱えた「アフォーダビリティー(生活コスト引き下げ)」と「変化」は全国の有権者が求めるものでもある。問題は、党主流派がトランプ政権の自滅を無為に待つ間に、マムダニのような極端な立場が党のナラティブを主導しかねないことだろう。

 6月24日に行われた、ニューヨーク市長選挙に向けた民主党の予備選の結果が全米に衝撃を与えている。

 アンドリュー・クオモ前州知事を破ったのは、33歳の州議会議員、ゾーラン・マムダニ。「民主社会主義者」を自称するウガンダ生まれのインド系モスリム教徒がニューヨークの名だたる政治王朝の当主に勝利したのだから、全国的な注目を集めるのも不思議でない。しかも、この結果は大統領選挙以降の民主党内の混迷に拍車をかけ、来年の中間選挙、さらには2028年大統領選挙に向けた戦略の在り方にも影響を与え得る。党内に与えた衝撃には無視し難いものがある。

路線対立と世代交代論――民主党が抱える二つの課題

 民主党内の混迷とは何か。最も大きな原因は、昨年の大統領選挙の敗因に関する見解の対立だ。

 党内主流派は、敗北の大きな要因は、移民政策をなどで進歩的立場を過度に追求したため、党の路線が一般の有権者の感覚から遊離したことにあると見る。そのため主流派は党の立場をより中道寄りに動かすことを志向しているが、この方向性は党内左派の主張と真っ向からぶつかる。というのも、選挙結果に関する左派の分析は全く逆で、党の路線が中道に寄りすぎたため、労働階級を中心とする伝統的な支持層が離反したことが敗因と結論付ける。

 こうした見解の対立は、トランプ政権への対峙の姿勢をめぐる論争にもそのまま持ち込まれている。一方で、主流派はトランプ政権に対して大規模な抵抗運動を展開すれば、ただでさえ民主党を「極端な左派政党」と決めつける共和党の策謀に力を貸す結果になるので、むしろ政権の自滅を待つ持久戦を志向しているのに対し、党内左派はこうした対応を無為無策として不満を高めている。

 対立が表面化したのは、3月に民主党の上院指導部が共和党提案のつなぎ予算案の採決を妨げない方針を打ち出した時だ。この決定は、政府効率化省(DOGE)による行革運動の嵐が吹き荒れる中で、政府閉鎖という事態を招くことは得策ではないという判断に基づくものであるが、多くの民主党支持者からは敗北主義として強い反発を招いた。この決定を契機に、進歩陣営の新旧スターである、バーニー・サンダース上院議員と、“A.O.C”ことアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は、独自の抵抗運動を主導することに踏み切り、「寡頭政治と戦え」と題する集会を全米各地で開催している。……

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