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トランプ大統領の発言とアクション(4月2日~9日):イラン「ホルムズ通航料はビットコイン払い」と米「暗号資産でドル覇権」は裏表

2026年4月11日


<span>トランプ大統領の発言とアクション(4月2日~9日):イラン「ホルムズ通航料はビットコイン払い」と米「暗号資産でドル覇権」は裏表</span>

トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した発言を、ストリート・インサイツ 代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼ビットコインは凍結困難▼GENIUS法・クラリティ法案は「ドル覇権維持と制裁執行」の二重戦略▼プライベート・クレジット市場に「イラン戦争の追い打ち」

 イランの発電施設等への攻撃期限まで残り1時間半を切った米東部時間4月7日午後6時32分、ドナルド・トランプ大統領は2週間の攻撃停止を宣言した。しかし、米国が提示した15項目の停戦条件とイランがパキスタンを介して送付した10項目の提案を照合すると【チャート1】、両者の間には構造的な断絶が横たわっており、合意への道筋は依然として視界不良だ。

 4月11日にイスラマバードで予定される直接協議が一定の前進をもたらすか、あるいは決裂に終わるか――市場はその行方を測りかねている。WTI原油先物は停戦発表直後に前日比19%超急落して91ドル台をつける一方、4月9日には100ドル台へ切り返すなど、異例の乱高下が続いた。

【チャート1:米国とイラン「停戦条件」の相違点】 拡大画像表示

 イランはペルシャ語版の10項目案においてウラン濃縮の継続受け入れを米国側に要求するなど、ワシントンが応じ得ない条件を複数盛り込んでいる。その対立点の一つがホルムズ海峡の通航料問題だ。トランプ氏は4月8日、通航料をめぐり「共同事業として行うことを検討している」と発言したが、その真意は依然として判然としない。

ビットコインは凍結困難

 この通航料徴収の仕組みを読み解くと、イランが長年かけて構築してきた制裁回避インフラの「完成形」が見えてくる。

 イラン議会の安全保障委員会は3月30日、ホルムズ海峡の通航料の徴収を承認した。ただ、複数の報道に基づけば、イランは停戦合意前から、ホルムズ海峡を通過する船舶に通航料の徴収を開始済みだ。ブルームバーグによれば、通航料は1バレル当たり1ドルで、人民元(人民元国際決済システム=CIPS経由)とステーブルコインで支払われるという。また、暗号資産の資金追跡・犯罪分析を行うTRMラボも人民元のほか、ビットコイン(BTC)、ドル建てステーブルコインであるテザー(USDT)が対象と伝えた。

 イランの石油・ガス輸出者組合スポークスマンのハミド・ホセイニ氏は、英フィナンシャル・タイムズ紙に対し、ビットコインに言及しながら生々しい支払い手順を説明している――「メールで積荷情報を送れば、支払いは数秒以内にビットコインで徴収される。制裁のために資金を追跡・没収されないようにするためだ」。

 この仕組みは、突然生まれたものではない。イランは2019年に国家管理下でのビットコインマイニングを合法化し、補助金付き電力を活用した採掘収益を中央銀行に還流させる仕組みを構築した。さらに制裁で遮断されたドル決済の代替として、石油取引に暗号資産を活用するインフラを積み上げてきた。ブロックチェーン分析企業Chainalysisによれば、その結果として、2025年Q4にイランの暗号資産エコシステム全体の約50%をイラン革命防衛隊(IRGC)関連が占め、その規模は年間78億ドルに達した。通航料徴収は、この蓄積の実戦転用だ。……

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