ラース・チットカ『ハチは心をもっている』(みすず書房、今西康子訳、2025年)には、まさかハチにこんなことができるとは! と何度も驚かされた。
たとえばマルハナバチは、机とアクリル板の間に挟まれた直接触れることのできない造花(砂糖水が仕込まれている)を、その造花に付いた紐を引っ張り、手前に寄せられるか(そして砂糖水を吸えるか)という実験。紐を引っ張る訓練を重ねると、多くのハチがこの課題を習得できたことにも目を見張るものがあるが、未習得のハチが熟練のハチが紐を引く様子を観察しただけでその技術をコピーできたという事実にはさらに強い衝撃を受ける。自然界のハチが、紐を引っ張ってエサにありつくようなシチュエーションに遭遇することは考えにくい。だが、彼らには未知の課題に対して柔軟に解決策を構築する認知能力が潜在的に備わっているらしい。
本書が示すのは、こうした行動は決して例外的な「芸」ではなく、ハチが世界を認識し、記憶し、推論する存在であるという事実である。色、形、匂いだけでなく、電気的な痕跡を使って訪問済みの花かどうかを見分けるなど、採餌の戦略を立てたり、状況に応じて行動を変えたりする。その姿は、知能は大きな脳を持つ動物の専売特許だと見なしてきた我々の思い込みを覆す。
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)といえば、工場設備や家電、都市インフラにセンサーを設置し、ネットに繋ぐ技術である。それでは「動く物」、すなわち動物にセンサーを取り付け、追跡すると何が見えるだろうか。……