<span>「うまく演じる」より大切なこと――舘ひろしはなぜ第一線で走り続けられるのか</span>
インタビューに応じる舘ひろしさん

ドキュメンタリー|カルチャー

「うまく演じる」より大切なこと――舘ひろしはなぜ第一線で走り続けられるのか

2026年5月18日

 人はみな、仮面をつけて生きている。新作映画『免許返納⁉』(2026年6月19日公開予定)で主演・舘ひろし(76)が演じる南条弘もそうだ。一世を風靡したアクションスターである南条は、齢を重ねるにつれて俳優としての立ち位置を変え、芸術映画での演技でも高く評価されるようになったが、本心では「ハーレーに乗ってショットガンをぶっぱなしたい」と思っている。南条を演じた舘自身も、シリアスからコメディまで振り幅の大きい役柄を演じる俳優だ。いくつもあるように見える仮面の下でどのようなことを考えているのか、「本当の舘ひろし」を知りたくて、インタビューを申し込んだ。(文中敬称略)

「恥部をさらけ出している」

自他共に認める映画スター・南条弘は、70歳にして人生最大のピンチを迎えていた——。映画『免許返納⁉』は、旧知の“悪友”であるライバル俳優(宇崎竜童)が起こしたバイク事故へのコメントがネットで一人歩きして、愛車のフェラーリをこよなく愛する南条が免許の自主返納に追い込まれる“ノンストップドライブコメディ”だ。

「あれは『帰ってきた あぶない刑事』を撮っていたときだったかな、東映のプロデューサーがふたりでやってきたんです。僕は30年前に『免許がない!』で南条役をやっているでしょ。あのときは免許を取ろうと一生懸命やっていたのが、今度は自分からそれを返す羽目になるって聞いて、二つ返事でOKしました。ホン(脚本)もなにもなかったけど、コンセプトだけでもう面白いじゃない」

映画の惹句は「見たことのない舘ひろしと対面するときが来た!」。舘が演じる南条は表舞台でこそスターであることを演じながらも、スポットライトから外れれば、嫉妬にかられてライバルの悪口を言いまくり、事務所の社長(吉田鋼太郎)やマネージャー(西野七瀬)も制御不能という人間くさい存在だ。

「どんな役でも、その人物の要素は自分の中にあるんです。撮影ではそれを増幅して出しているだけ。南条弘のおかしさ、せこさ、こころの狭さみたいなものは僕にもあって、そういう意味で今回は、ふだんは近い人にしか見せない恥部をさらけだしているというか、素の自分に近いかもしれない。なにしろ渡(哲也)さんからも、石原(裕次郎)さんからも『うまい演技をしようとするな、生きざまが演技に出るんだ。作品ひとつひとつを演じていくんじゃない、人生をまるごと演じていくんだ』って言われて育ってますから。役者って、本来そういうものでしょ」

たしかに、自宅のガレージで愛車のフェラーリをまるで女性に触れるかのように愛おしそうに手入れする南条の姿も、舘そのもののとしか思えない。そう伝えると、「車はトヨタの2000GTにしてほしかったんですけどね」と笑って言葉を継いだ。

「アドリブも多かったんです。もともと現場でいろいろ考えるのが好きなんですけど、今回はホン(脚本)がしっかりしていたから、いいヘッドアレンジ(現場での即興的な工夫)が自然に出てきた。『免許がない!』で教習所の教官役だった西岡(徳馬)さんと思いがけず再会して『年取ったなあいつ』って言ったのも、西野(七瀬)さんが『人のこと言えませんよ』と返してくれたのもアドリブです。彼女はいい役者で、ずいぶん助けられましたね。(吉田)鋼太郎さんは達者なのに抑えた演技が面白くて」

画像
舘ひろし3
作中のシーンを再現する舘ひろしさん

 

「やらないよな」と言われたから「やるべきだ」と思った

 そのうえで「自分の演技が面白いと思ってもらえるなら、それはいい影響を与えてくれた恭サマ(柴田恭兵さん)に感謝」と言う舘には、いまに続く大きな転機となった作品がある。

「自分がいまも俳優としていられるのは『あぶない刑事』のあとに『パパとムスメの7日間』があったからだと思うんです」

2007年にTBSの日曜劇場で放送されたホームドラマ(全7回)だ。ある日突然、人格が入れ替わってしまったサラリーマンのパパ(舘ひろし)と女子高生のムスメ(新垣結衣)。すれ違っていた父と娘がお互いの日常を体験することでこころを通わせていく。コミカルなタッチのハートウォーミングな作品で、舘にとってはホームドラマ初挑戦だった。

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