太陽のような笑顔
30年前、私はがんセンターの医員に採用されて赴任した。その前に研修生として半年ほど在籍していたので、知った顔は多かったが、やはり新参者の下っ端として緊張していた。カンファレンスで、笑顔で声をかけてきた同年代の医師がいた。がんセンターではみな、「舐められたらいけない」とでも思っているのか、わざとのように厳しい表情・怖い顔つきをする人間ばかりだったので、その屈託のない笑顔は場違いのようにさえ感じられた。それが坪井正博先生との出会いだった。
当時、彼は外科のチーフレジデントをやっていて、その前年にわが編集者の肺癌手術を執刀している。わが編集者はすぐにその人柄に惚れ込んでしまったそうだ。休日でも夜中でもベッドサイドに来てくれて、24時間いつも仕事場にいるようなのに、どうしてあんなに素敵な笑顔でいられるのかと不思議がっていた。